現在、パナソニック汐留美術館で開催中の「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」を観てきました。

 まあ言うまでもないことですが本展は、映画にもなったヤマザキマリさんの漫画「テルマエ・ロマエ」にあやかった展覧会です。もちろんヤマザキマリさん御本人が全面協力。美術館でお風呂の展覧会をやるとは前代未聞です。監修した芳賀京子東大大学院教授も「日本以外ではまずありえない」と断言したとか。

 それもそのはず。そもそもお風呂ないしは浴槽につかる文化というのが日本以外では殆どないそうです。確かに私は中国で駐在したことがありますが、あちらの住まいは浴槽なしか、あってもごく底の浅いタイプのものでした。


当時最大規模のカラカラ浴場250分の1模型。スーパー銭湯ですね。

 それが古代ローマには公共浴場が11箇所、大小あわせると900箇所の浴場があったそうです。現在の東京の銭湯が700箇所だそうですから、今の東京より多いわけです。どんだけーお風呂好きなのでしょうか。

 もともとローマにはアスリートの文化があり、さまざまな競技が盛んだったそうです。古代の話ですから運動するときは全裸です。その時身体についた汚れを落とすために浴場の習慣が始まったそうです。

 もちろん古代のお話ですから檜風呂なわけではありません。日本もそうでしたが最初は蒸し風呂だったようです。ただ後期には「つかる」浴槽もありました。


《恥じらいのヴィーナス》先日のローマ展でも同じポーズの傑作がありましたね。

 さてその本展ですがお風呂の展覧会といっても風呂桶がたくさん並んでいるわけではありません。そこはさすがに美術館です。今回はナポリ国立考古学博物館の協力のもと、約2000年前の古代ローマ時代の貴重な遺物・美術品が多数出品されています。美術展としてもちゃんと成立しています。博物館の方は何でお風呂グッズばかり持っていくのか、さぞかし不思議だったことでしょう。

 当時のローマはもちろん一般市民と奴隷が明確に別れ、一般市民は饗宴とよばれる宴会を楽しみ、お風呂を楽しんだそうです。セレブな暮らしですねえ。

 どうしてそんなにローマの暮らしがはっきりわかるかというと、例のポンペイ遺跡から当時の暮らしを描いた壁画や出土品が多数発見されているからです。さながら当時の暮らしを冷凍保存して持ってきたかのようです。

 そんな階級制度が厳格だったローマですが、お風呂に関しては誰でも入れたようです。皇帝みずから入浴することもあったそうです。裸になればみんな同じということでしょう。


日本も負けてません。

 展示の後半では日本の入浴文化も紹介されています。銭湯は年々減りつつありますが、ぜひこの日本独自といっていい文化は残したいものです。


うちの近くの銭湯は黄色いケロリンですした。

パナソニック汐留美術館
「テルマエ展」は6月9日まで開催中です。
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