現在、森アーツセンターギャラリーで開催中の「MUCA展」を観てきました。

 MUCAとは「Museum of Urban and Contemporary ART」の略称。2016年に開館したばかりのドイツにあるアーバンアートの美術館の名称です。本展はそのMUCAの約1200点に及ぶコレクションの中から10名のアーティストの作品約70点を紹介する展覧会です。

 10名の共通点はいずれも、アーバンアートまたはストリートアート、つまり公共空間を作品発表の場としてきたことです。



 例えばKAWSはバス停や電話ボックスの広告にスプレーアートを描くことからキャリアをスタートさせました。



 インベーダーは世界中の壁という壁にピクセルアートを描いています。その数、79都市4000点にものぼるそうです。



 リチャード・ハンブルドンはストリートアートのゴッドファーザーと呼ばれているそうです。彼は舗道に被害者の輪郭を描き、偽の犯罪現場を演出しました。また人々を驚かせるためにNYの様々な場所に、黒い人影-通称シャドウマンを描いているそうです。確かにこんな人影が路地に描かれていたら、夜や薄暗だったらギョッとしますよね。



 みなさんご存知バンクシーも。これはあのシュレッダー事件の作品ですね。

 さてそんなアーバンアート/ストリートアートですが、私はこうしたアーバンアートの作品を美術館ないしはギャラリーで展示・紹介することは懐疑的です。アーバンアートは、描かれた場所や地域に根差しているからです。例えばバンクシーがパレスチナの壁に描いた《花を投げる人》を壁から剥がして日本の美術館に展示したらどうでしょうか。それでは作品の持っているメッセージ、意味が全く伝わりません。

 美術館には作品を収蔵し後世に伝える・残すという役割があります。そういう意味では、作品を収蔵すること自体には意味があるとは思います。特にアーバンアートはいつ消え去っても仕方のない作品ですし。ただ見る側としては、その作品が置かれた場所の意義も考えながら鑑賞する必要があるなと思います。

 さてそんなアーバンアートの美術展ですが、正直なところ展示されている作品数や質からすると、ちょっとコストパフォーマンスが・・という気がします。また写真撮影が全面OKなのはよいのですが、なぜか鉛筆でのメモ書きが禁止されていました。なんででしょうね。

森アーツセンターギャラリー
「MUCA展」は6月2日まで開催中です。
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