上海特別編、今回は先だってご紹介した浦東美術館で現在開催中の3つの展覧会をご紹介します。




 「プラド美術館のモナリザ」展は、プラド美術館が開館当時から収蔵していた「モナリサ」を紹介する展覧会です。この絵は発見された当初は背景が真っ黒に塗りつぶされていました。



 ところが修復のためX線検査をしてみると、この背景に本家モナリザと同様の景色が隠されていることが判明し大騒ぎに。その後修復と黒い背景の除去作業が進められた結果、本物とうり二つの絵が現れたということです。

 しかも支持材がレオナルド・ダ・ヴィンチが使用していたものと同じクルミ材であることもわかり、現在ではダ・ヴィンチの工房で、ダ・ヴィンチの監修によって制作されたものではないかと推定されているそうです。おそらく、最も最古の、つまり「モナリザ」と同時代の複製画なのでしょう。

 本物と見比べると、本物が謎めいた微笑なのに対して、プラドのモナリザは明確にこちらに向けて笑いかけています。また本物に特有のスフマートと呼ばれるぼかし技法もなく、くっきりと輪郭がわかります。とはいえ、本物を研究する上でも貴重な資料であることは間違いありません。この1点だけで1フロアなのもよく理解できます。




 「光輝時代」はプラド美術館が収蔵する作品の中から69点を精選し、16世紀から20世紀のスペインの歴史とヨーロッパ美術の発展を展望する展覧会です。さすがプラド美術館だけあって、ルーベンスの《馬上のフェリペ二世》や



ベラスケスの《狩猟服姿のフェリペ四世》などをはじめとする、巨匠たちの作品が並んでいます。特に充実していたのがエル・グレコやゴヤでした。


ボッシュフォロワーの作品

 ちょっと興味深かったのが、巨匠たちの作品に似ているけどなんか違うなあと思ってみたら、〇〇工房作とか、〇〇のフォロワー作という註釈が多かったことです。日本だとあまりこの種の作品は持ってこないのです。なんかこの微妙に「これじゃない感」が面白かったです。展示側の意図とは違うんでしょうが。



 「百年狂想」はスコットランド国立美術館の協力によるシュルレアリスムの展覧会です。今年はブルトンの「シュルレアリスム宣言」から100年周年ということで、日本でもあちこちで企画展・記念展が行われていますよね。実は3つの展覧会の中では、この展覧会が一番作品が充実していたように思います。



 マックス・エルンストから始まって、タンギー、マグリット、ミロ、ダリなどの有名どころの良作が揃っていました。



 というわけで、どれか一つだけでも十分美術展として成立するほどボリュームがあります。それが同時に3つも開催されているとは中々に大盤ぶるまいです。残念ながら日本から行くにはハードルが高いのですが。

 ちなみに「光輝時代」は9月1日まで、「100年狂想」は8月31日まで開催中です。
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