現在、静嘉堂文庫美術館で開催中の静嘉堂文庫竣工100年 ・ 特別展『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎 「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで』展を観てきました。

 河鍋暁斎は幕末から明治に活躍した絵師、松浦武四郎は同時期に活躍した探検家であり著述家です。ちなみに松浦武四郎は北海道の名付け親だそうです。もとは北加伊道だったんですね。そんな二人は仲がよかったらしく、コラボ作品が残っています。

 静嘉堂文庫美術館がなぜこの二人の展覧会を企画したかと言うと、松浦武四郎ゆかりの品々、古器物を静嘉堂文庫美術館が収蔵しているからです。



 とまあそんな本展なのですが、目玉はこの河鍋暁斎の「武四郎涅槃図」です。この作品、一応(失礼)重要文化財なんですが、絵として優れているというより(まあもちろん河鍋暁斎が描いているので優れているわけですが)、あまりにも面白すぎる絵です。なにしろ普通は「仏涅槃図」として釈迦が亡くなった時のシーンの絵であるところを、真ん中に堂々と昼寝しているのはこともあろうに松浦武四郎御本人なのです。まわりに勢揃いしているのはお釈迦様の弟子ならぬ、武四郎の縁やゆかりのある人や動物、道具ばかり。ちなみに足元で伏しているのは奥さんだそうです。




 言ってみれば茶番劇なのですが、河鍋暁斎が描くと大変ありがたい絵に見えるから不思議です。

 なかでも面白いのは、絵の中で武四郎が身につけている首飾りや煙草入れは実在するものだということです。



 例えば武四郎の首元の首飾りの実物が


これです。


また手元のタバコ入れは


これですね。まんまです。


 洒落の絵なのにも関わらず、武四郎はこの絵にあれを書け、これを加えろとしつこく注文をつけまくったらしく、完成まで6年もかかっているそうです。しまいには河鍋暁斎は武四郎のことを「いやみ老人」と言っていたそうですから、相当だったんですね。

 また絵的にいうと、登場しているキャラクターにあわせてタッチや描き方を変えているのが興味深いのです。まるでコラージュしているように見えます。私はビートルズのサージェット・ペッパーズを思い出しました。

静嘉堂文庫美術館
「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」は6月9日まで開催中です。
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