現在、銀座のヴァニラ画廊で開催中の光宗薫さんの個展「むかしむかし」を観てきました。

 昨年、やはりヴァニラ画廊で開催された光宗さんの個展のテーマは「SEMITOPIA」ということでセミづくしだったのですが、今回のテーマはうってかわって日本むかしばなしです。


  私たち誰もが知っている「かさじぞう」や「舌切り雀」「鶴の恩返し「金太郎」などのおはなしがとりあげられています。それが光宗さんの手にかかると、一種幻想的な絵画に生まれ変わります。



 ちょっと一言では表現できないのですが、線や形が唯一無二といっていいほど独特です。この世界観は光宗さんしか描けないでしょう。正直なところ、好き嫌いは分かれるのではないかと思います。



 本展のキービジュアルとなっている「蜘蛛の糸」をあつかったこの《Remorse》では、片隅で震える?小さな蜘蛛に数えきれないほどの手が伸びています。それは蜘蛛に助けを求める亡者の群れなのでしょうか。それとも蜘蛛に差し伸べられた救いの手なのでしょうか。

 興味深かったのはこのモノクロームの絵に使われている画材に、水彩やアクリルに加えて「塩」が使われていることです。作品によっては表面の肌がざらついているので、そこに塩が使われているのでしょうか。あるいは白い点々が塩なのでしょうか。いずれにしても画材に「塩」というのは珍しい。それはひょっとしたら清めの塩なのかなと思いました。

 光宗さんの絵を観て思ったのは、いわゆるアール・ブリュットやアウトサイダーアートと呼ばれる方たちの作品と空気感が似ていることです。好きとか嫌いとか、良い悪いとか、上手いとか下手といった理屈を超えて、訴えかけてくる力が光宗さんの作品にはあります。それは生きる力が作品に込められているからです。光宗さんにとって絵は生きるとこと、息をすることと同意義なのでしょう。

ヴァニラ画廊
光宗薫個展「むかしむかし」は4月21日まで開催中です。独特の世界をぜひ実物でご覧ください。
240329