現在、横須賀美術館で開催中の「日本の巨大ロボット群像―巨大ロボットアニメ、そのデザインと映像表現―」を観てきました。

 それにしても公立の美術館の展覧会のテーマが堂々と「巨大ロボット」とは世の中変わったものです。何しろエントランスで私達を迎えてくれるのが、「戦闘メカ ザブングル」のウォーカーマシンですから。



 まあ国立美術館で庵野秀明展を盛大に開催するぐらいですから、これが世の流れというものなのでしょう。ロボットアニメを観て育った私にとっては美味しいご馳走だらけの展覧会でしたが。

 最初に。本展の惹句は「あなたが憧れた巨大ロボットが美術館に出現!!」ですが、さすがに原寸大の巨大ロボットが林立するような事態にはなっていません。サブタイトルが明らかにしているように、本展はロボットのデザインの展覧会なのです。デザインというところが美術と通底するわけです。マニアの方にわかりやすくいえば、設定資料集がパネル展示されていると思っていただければいいでしょう。



 さて巨大ロボットアニメの原点は1963年に放映された「鉄人28号」に始まります(念のため付け加えておくと、これより前に実写版があります)。そこから72年の「マジンガーZ」で人が乗り込んで操縦することが定番化し、79年の「機動戦士ガンダム」でリアリティが加わることによって、巨大ロボットアニメの豊穣な世界が広がります。

 ざっと紹介されているロボットを挙げてみると、「鉄人28号」に始まり、「ゲッターロボ」「マジンガーZ」「ライディーン」「コンバトラーV」「ジーク」「ガンダム」「ラムダ」「スコープドック」といったラインアップです。



 実物の原寸大は無理だったので、床面で貼られた実物大ガンダム。



 シールドがデカいのはわかりますが、ビームライフルのデカさには笑いました。



 さすがに設定資料のパネル展示だけだとアレなので、会場にはスタジオぬえの宮武一貫さんが描いた巨大ロボットの巨大絵画が展示されています。これは本展のために特別に制作されたものです。本展の図録に宮武さんのインタビューが掲載されていますが、それによると宮武さんもこのサイズの絵を描くのは初めてだったそうです。そもそもキャンバスに向かうことも初めてで、新鮮な体験だったようです。

 私が一番面白かったのは展示の一番最後にあるコーナーです。ここでは各界を代表するクリエイターの方が「なぜ巨大ロボットには格納庫が必要なのか?」とか「どうして巨大ロボットは人の形をしているのか?」という質問に真正面から答えています。中でも押井守監督は「なぜ、巨大ロボットは二本足で歩くのか?」という身も蓋もない質問に対して、「日本人のロマンだから」と回答しています。さすが押井監督、よくわかっていらっしゃいます。

 大童 澄瞳さんの漫画「映像研には手を出すな!」では、主人公の三人は高校生にして巨大ロボットアニメを作ろうとします。監督兼設定担当の浅草氏は途中ロボットアニメの壁にぶち当たり、作業が止まってしまいます。アニメーターの水崎ツバメには「ロボアニメ制作は逃れられない罪を背負うこと」とあっさり言われてしまいます。そしてプロデューサーの金森さやかに「更に好き勝手に描く以外の選択肢はない」と断言されて立ち直ります。日本の巨大アニメに携わった方々は、みなさん罪を背負いながら制作しているんですよね。ここで改めてねぎらいと感謝を捧げます。

横須賀美術館
「日本の巨大ロボット群像」展は4月7日まで開催中です。なお横須賀美術館の次の企画はジブリ展だそうです。狙ってますねー。
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