現在、川崎市岡本太郎美術館で開催中の「第27回岡本太郎現代芸術賞展」を観てきました。後編をお届けします。



遅四グランプリ実行委員会《遅博2024ー人類の進歩と遅延ー》
 私が本展でもっとも「ウケた」のがこの作品です。何かと「早い」ことが尊ばれる世の中ですが、本作品は公然と反旗を翻します。「遅い」ことの美学に着目した「遅イズム」を提唱する作品なのです。



 そのメインの展示はミニ四駆ならぬ「遅四」です。ブースには様々な遅四のミニカーが展示されています。いかにも遅そう、というか走らなそうです。実際に走っている作品も床に展示されているのですが、遅すぎて動いているのか動いていないのかわかりません。そのほかやんツーさんはじめ、様々なアーティストが「遅いことの美学」を世に問う作品を展示しています。



鈴木のぞみ《Light of Others Days:吉田理容室》
 鈴木さんの作品はかつて存在した理容室の、いわば再現展示です。壁面には理容室に付き物の大型鏡そのものが掲げられています。その鏡に映るのは、かつて鏡が映していた店内の景色です。これは理容室の記憶を再現する展示でもあるのです。



横山豊蘭《トロトロ遺跡》
 展示会場に巨大な鳥居が設置されています。御本尊として掲げられているのは巨大な脳の図です。拝んだら頭がよくなりそうです。

 横山さんは書家なんですね。この作品も神社ではなく「書」であり「書のエキス」を絞り出しているそうです。同時に脳のエキスもきっと絞り出していそうです。



李 函樳《無から来る、無故に集う》
 鳥居の次は大仏です。どうやら岡本太郎現代芸術賞は何でもありのようです。金色に輝く大仏は洋紙や古書のハリボテでできています。きっとこれは空即是色を形にしたものなのでしょう。



フロリアン・ガデン《Anomalies poetiques/詩的異常》
 壁一面に無数の絵が貼り付けられています。一見、普通の日常景色を描いたように見えますが、そのひとつひとつに「異常」が存在します。謎の生き物が入り込んでいたり、不気味な姿の人が潜んでいるのです。心霊写真のようです。これだけ集まると、もうそれ自体が異常で不気味です。



小山久美子《三月、常陸國にて鮟鱇を食ふ》
 最後に絵画作品をご紹介します。ここまでトンデモな作品ばかりだったので普通の平面作品を見るとホッとします。しかしこの作品もただの風景写真ではありません。ふつうの漁港の景色ですが、鮟鱇を食らっているのは武士(もののふ)だからです。絵では右側の鮟鱇を捌くところから、同時異図法で鮟鱇を食べる景色が描かれています。どうやらこれは時を超えて、鮟鱇美味しいよね、という絵画のようです。

川崎市立岡本太郎美術館
「第27回岡本太郎現代芸術賞展」は4月14日まで開催中です。
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