現在、東京都庭園美術館で開催中の「開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z」展を観てきました。本展は毎年この時期恒例の「庭園美術館御開帳展覧会」すなわち建物公開展です。

 文部科学省の令和3年の調査によると日本には博物館およびそれに類する施設が合計で5,771箇所あるそうです。それだけ数ある中でも、素の建物だけで展覧会が成立しうるのは、この東京都庭園美術館と国立西洋美術館ぐらいではないでしょうか。

 しかも本展は開館40周年を記念してということで、いつになく力が入っています。もっとも展示物に力が入っているのではなく、極力展示物を取っ払うという方向で力が入るのが本展の面白いところです。



 私が思うに本展の最大の見どころは「床」です。一部だけですが、ふだんは絨毯が敷かれている部分が開かれて、本来の床が丸見えになっているのです。これ初公開だそうですよ。



 しかもその床は見事な寄木細工の床なのです。組み方も部屋によって異なっており、それぞれに見どころがあります。



 また壁紙ひとつとっても、本館の内装基本設計を行ったアンリ・ラパンが自ら描いた油彩画だったりします。その一部分には未だ水の流れを表した銀色部分が残っているのです。

 大食堂のレリーフはフランス直輸入だったそうですが、輸送中に破損してしまい、日本で型取りした石膏が使われているそうです。そんなところにもこの歴史的建築物を作ったドラマがあるのです。


手前の小さな作品が須田さんの作品です。なんと奥ゆかしいことでしょう。


 展覧会とあって伊藤公象さんと須田悦弘さんがゲスト・アーティストとして参加しています。とはいえ本展の主役はあくまでも庭園美術館の建物そのものとあって、お二人の作品はごくごく控えめです。須田さんの作品など探さないと気づかないほどです。

 日本とフランスの匠たちが総力を結集して作り上げた建物だけあって、隅から隅までデザインの塊です。



 特別に公開されているウィンターガーデンでは、棚を支える柱までデザインされていることに驚きます。


 庭園美術館には何度も足を運んでいますが、見るたびに新しい発見がある素晴らしい建物です。願わくばこの建物が老朽化などといわず末永く存在しつづけることを祈念するものです。


会場では庭園美術館の見どころを解説するリーフレットがAからZまで各所に配置されています。これであなたも庭園美術館博士になれる?!


東京都庭園美術館
「開館40周年記念 旧朝香宮邸を読み解く A to Z」
は5月12日まで開催中です。
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