現在、佐藤美術館で開催中の平良志季さんの個展「可笑し異界(おかしいかい)?」展を観てきました。本展は平良さんの美術館における初めての展覧会だそうです。美術館デビューという訳ですね。

 平良さんの描く絵はとても21世紀とは思えない古風な図柄です。使う材料も伝統的な日本画の材料である岩絵の具です。ちなみに河鍋暁斎や葛飾北斎が“推しメン”だそうです。ただし題材はもちろん21世紀です。



 本展の目玉展示であるこの大作《Let's go☆鎖国》がそうです。この作品は2022年TARO賞入選作です。

 お話はこうです。ある少年が閻魔大王様の元に行き、高齢化・少子化・人口減少の上、グローバリゼーションの波に晒される日本の行く末に不安を感じると胸のうちを訴えます。それに対する閻魔大王の回答は「なら鎖国せよ」というもの。すっかりそれを信じた少年は新興宗教閻魔教の教祖に治まるも何を勘違いしたかハーレムに溺れてしまい、閻魔さまは大激怒。日本は沈没し、何もかもなくした日本人を外人と宇宙人が宇宙から嘲り笑う・・・(多分、そういう話だと思います。間違っていたら御免なさい)。



 平良さんはこの作品を今、日本でアートを創るというのはどういうことか、またどう何を創るべきなのか悩みながら制作されたようです。

 私は様々な現代アーティストの作品を観ていますが、現代の社会問題に正面向き合って取り組んでいる方は実は希少ではないかと思います。



 他のフロアの展示も、閻魔様に淡い恋心を描く乙女を描いたり、諱(いみな)にネタ切れする閻魔様を描いたりと、独特な異界が広がっています。ちょっと「千と千尋」に近い匂いも感じます。面白いです!

佐藤美術館
平良志季の「可笑し異界おかしいかい?」展は2月12日まで開催中です。
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