現在、東京蒲田にあるギャラリー「アート/空家 二人」で開催中のAIをテーマにしたグループ展「新しい嘘」を観てきました。
「アート/空家 二人」というから、どんなところかと思ったら、本当に住宅街にあるふつうの民家、というか空家でした。看板がなければ絶対にギャラリーとは思われないでしょう。
今年に入って特にAIをテーマにした展覧会があちこちで開かれています。私が本展を見て、なるほどなあ、と思ったのは「アート/空家 二人」が「全ての創作物は嘘からできている」と考えていることです。「嘘」というとドキリとするのですが、実在しないという点では、それは「虚構」と言い換えることができます。AIの創作物について、どこまで認めるのかという論議がありますが、人間が創ったものであれ、AIが創ったものであれ、すべて「嘘」だ、という点で等価だと考えるべきなのでしょう。
この映像作品は、短いプロンプトから創った架空の、つまり「嘘」の景色です。大画面で見る美しい景色は実際にありそうです。と同時に、どこか嘘っぽいのです。この景色にはゴミひとつ、チリひとつ落ちていません。完璧な美しさなのです。それがどこが不自然にも見えます。しかしいつかはまったく自然の景色と見分けがつかなくなるのかもしれません。
迫鉄平《Blue Fairy Tale》
迫さんの作品は、写真を撮った写真です。写真の中の写真は、実在の景色ではありません。AIで生成された「嘘」の風景写真です。それが現実の風景と重ね合わされています。しかしこの現実の風景も本物なのでしょうか。どこまでが嘘でどこまでがホントなのか。互いに入れ子構造になっていて、無限に続きそうな気もします。
奥野智萌《人魚の所以》
「人魚に一番近いのはヒラメ」から始まる漫画物語は、手前の標本で結実します。これが「人魚」なのでしょうか。どう見てもヒラメです。しかしこのヒラメは両側に目があります。つまりヒラメとカレイを裏表で縫い合わせた標本なのす。なにもかもすべて嘘なんですよね。
アート/空家 二人
「新しい嘘」展は10月9日まで開催中です。
230921