現在公開中の堀田真由さん主演の映画「バカ塗りの娘」を見てきました。

 津軽塗職人の家に生まれた美也子は、父の手伝いをするうちに、津軽塗への思いが深まっていく・・・。

 この映画に興味を持った、というより知ったきっかけは、夏休みの弘前旅行でした。たまたま時間が空いたので弘前市立博物館に行き、たまたまそこで『「バカ」がつくほど愛している』展をやっていて、たまたまこの映画の告知を見たのです。

 この博物館の展示では「バカがつくほど」のタイトルの下、津軽塗・こぎん・ねぷたが紹介されていました。どれも弘前地方の伝統文化であり、どれも制作に「バカがつくほど」根気が必要であり、どれも弘前市民に「バカがつくほど」愛されています。

 津軽塗は漆塗の伝統工芸ですが、ひたすら塗っては研ぎ塗っては研ぎを繰り返すのが特徴です。博物館でもその工程が紹介されていましたが、確かに「バカがつくほど」何度も何度も繰り返します。この工程を繰り返すのは、漆の層が積み重なるほどに耐久性が増し、深みがでるからでしょう。それにしても、実際にやることを考えると気が遠くなりそうです。

 この映画は津軽塗りの親子の物語なので、上映時間の大半は津軽塗りの制作過程です。つまり塗っては研ぎ、研いでは塗る繰り返しが主役の映画なのです。そんなの退屈では、と思うところですが、最初の白木の器が深みのある輝きに変わっていく工程は、不思議と魅せられるものがあります。

 主演の堀田真由さんは、ふだんは今風の女性役が多いと思うのですが、本作では寡黙な主人公をたんたんと演じています。恐らく本当に津軽塗に携わる方々も寡黙で、ひたすら漆と向かう方々なのでしょう。映画は1年近い時間経過を追うものなので、撮影もきっと大変だった思います。

 もっとも一番大変だったのは、あのピアノに津軽塗を施した方々かもしれません。
230921