現在、オペラシティアートギャラリーで開催中の野又 穫さんの個展『Continuum 想像の語彙』を観てきました。まずは作品をご覧いただいたほうが早いでしょう。



『Structure-1』


 どれも不思議な作品です。巨大な建築物というか構造物が描かれています。そのスケールはありえないほど巨大であり、そのデザインはありえないほど謎です。一体なんのための建造物なのか、それすら不明です。


『世界の外に立つ世界1』

 非現実的な光景なのですが、いかにもありそうに見えるのは、構造物が鉄骨みたいな骨組みと漆喰塗りみたいな壁でできているからです。上に登るには、階段か梯子です。とてつもなく巨大な建物なのに、とてつもなくローテクなのです。古代ギリシアの神殿にでもなりそうです。


『Alternative Sight2』

 作品によっては一部が水槽や温室になっているものもあります。よく見ると水面部分はむき出しになっているので、この絵は構造物をそのまま書いたのではなく、断面図や構造図になっていることがわかります。作品にはほとんど人物は描かれていません。ただはしごの段数や窓の大きさ、位置から、とてつもない高さであることがわかります。作品の多くが縦型で描かれているのも、収まりきらない高さを表現するためでしょう。


展示風景

 会場には絵だけでなく、野本さんが作った実際の模型もあります。さすがにスケールは何分の一かですが、絵を描く上で、構造を考えながら描いていることがよくわかります。また創作スケッチやノートなども展示されていて興味深いものがありました。


『都市の肖像』

 今、このレポートを書きながら思い出したのが、先日見た「ガウディとサグラダ・ファミリア」展でした。サグラダ・ファミリアもまた一人の芸術家が生み出した、ありえないほど巨大な建造物であり、芸術作品です。野又さんもまた、実物は作れないまでも、建造物の中に自らの芸術世界を見つけた方なのでしょう。
オペラシティアートギャラリー
野又 穫個展『Continuum 想像の語彙』
は9月24まで開催中です。
230912