5月7日で終了してしまうのですが、目黒区美術館の区民ギャラリーで開催中の『そこにも、苦がある。』展を観てきました。

 人生に「苦」はつきものです。本展はその「苦」について、『「共苦」のうえで自己と他者の苦しみへの責任をこの時代に問う。』という展覧会です。



山岸玄武《恐山、積み石、風車》
 恐山といえば日本三大霊場のひとつ。石を積み上げれば先祖の声が聞えるといいます。そこには子供をなくした人が霊をなぐさめるために刺した風車がまわり続けています。人生の苦を追悼するような場所なのかもしれません。



張洋宇《ピルケース》
 これは鑑賞者参加型のインスタレーションです。ピルケースの中に、鑑賞者がメッセージを書いて封入することができます。壁に架かったピルケースの数だけ、苦が集まっているのです。

 鑑賞者は自分の苦を書き込むこともできますし、人の描いた苦を読むこともできます。そこに「共苦」の体験があります。



飯嶋桃代《fountain》
 古くから人は水の近くに住んできました。泉は自然の恵みであり、共同体をつくる元でもあります。泉が枯れるときは共同体が壊れる時でもあります。

 「苦」について何か言えることがあるとすれば、苦しんでいるのは一人だけではないということです。誰もが何かしら苦をもっています。その一つ一つは必ずしもすべて癒されるものではないかもしれません。しかし他人も苦しんでいることを知っていれば、和らげられるものでしょう。本展でいう「共苦」はそういうことではないかと私は思います。
230507