現在、東京藝術大学大学美術館で開催中の『「買上展」藝大コレクション展2023』を観てきました。
「買上」とは、その名の通り、藝大が買い上げた作品のことです。東京藝術大学では卒業・修了制作の中から優秀な作品を買い上げる制度があるそうです。何しろあの東京藝大ですから、学生とは言え錚々たる顔ぶれです。第一部では1893年の最初の卒業生からの作品が展示されています。横山大観や下村観山といった巨匠の作品が揃っています。
その中で私が惹かれたのはこの和田英作の『渡頭の夕暮』でした。夕刻、川の向こうには夕焼けが拡がり、川面に照り映えています。岸辺では私の船を待つ人々がいます。お母さんは赤ん坊を抱き、子供は川を指して、もうすぐ船がやってくることを告げているようです。末っ子らしい子供は川べりに立ち、船が待ち遠しそうです。一方、労務者らしき男は荷に腰掛け、疲れた体を休めながら煙草を吸って船待ちです。見事な夕焼けの色模様と人々の対比が印象的な絵画です。
高村豊周『香炉』
第一部では、絵画や日本画もさることながら、彫刻や工芸品のすばらしさに目を奪われます。この高村の作品など、学生の作品とは思えぬ完成度です。
朝倉文夫『進化』
これは朝倉文夫の卒業制作だったそうです。進化というタイトルが表すのは、人間なのでしょうか、それとも猿なのでしょうか。
赤松麟作『夜汽車』
この作品は先日東京ステーションギャラリーで行われていた「鉄道と美術の150年展」で見ました。まさか卒業制作だったとは。卒業制作がもはや代表作になっています。
高村光太郎『獅子吼』
日蓮を描いた像です。少し左に傾いた立ち姿は、人物の巨大さを感じます。切れ味鋭いかっこいい像です。
東京藝術大学大学美術館
『「買上展」藝大コレクション展2023』は5月7日まで開催中です。
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