現在、アーティゾン美術館で開催中の『ダムタイプ 2022:remap』を観てきました。

 ダムタイプは2022年に開催されたヴェネチア・ビエンナーレの日本館において展示を行いました。本展はその帰国展です。

 本展の第一印象は「真っ暗」です。何しろ入口に入る前からほの暗く、中に入るとさらに真っ暗です。足元すら確かではありません。その暗闇の中に浮かび上がるのがこの装置です。



  装置に置かれているのはレコードプレーヤーです。ターンテーブルには分厚いレコードが載っています。レコードのレーベルは地図になっていて都市名が記されています。どうやらその地で採取した街のざわめきや鳥のさえずりなどが録音されているようです。都市は北京、ニューヨーク、東京、台北、リオデネジャイロなど世界各地にわたります。



 展示室の中にはさらに展示室があり、さらに真っ暗な空間が広がります。中央には天井からモニターが吊るされており、そのモニター映像を反射する鏡が床に置かれています。モニターに映るのはどうやらどこかの地図のようで、緯度経度らしき数字が表示され、常に移動し続けています。バックグランドでは、地球や地理についての問いかけが聞こえるか聞こえない程度の音で流れています。

 タイトルのremapが表しているように、本展の展示は場所または地理、都市、地図、移動に関するもののようです。コロナ禍が続く今、まだまだ私たちは世界のどこかに気軽に行くことは難しい状況です。その中にあって、自分の現在地点はどこにあるのか、また自分がいる都市以外はどうなっているのか、そういった思いに誘うことが本展示の狙いのように思えます。ピンポイントの展示以外は暗闇に包まれているのも、そうした思いに純粋にふけって欲しいからでしょう。

アーティゾン美術館
『ダムタイプ 2022:remap』
は5月14日まで開催中です。
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