現在、東京オペラシティアートギャラリーにて開催中の『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』展を観てきました。



 さて本展で驚かされるのは、ただでは入場できないことです。鑑賞者は入口でコイン・ロッカーに格納されたマントを身に着ける様に指示されます。真ん中に穴が一つ空いているだけで、そこから頭を通し被ります。全身がすっぽり隠れてしまいます。

 そこからさらに前説のコーナーに通され、15分間におよぶ案内兼指示を聞かなければなりません。このため鑑賞用にスマホとイヤホンが必須です。そのインストラクションも会場内の10の禁止ルールを延々と説明されるというものです。


 そこをやっと通り抜けて待ち受ける展示室はさらに不可解です。



 置かれているものは倒れてしまった不燃ボードの壁、倒れて見えないモニター、これまた倒れてしまった園芸の何かの装置などなどです。まったく持って意味不明です。

 意味不明なのはこれだけにはとどまりません。次の部屋に行くと、さらに意味不明になります。

 鑑賞者はマントを抜いで持ったまま、自室に移動する間に黒い棒を取るよう指示されます。そして次の部屋に待ち受ける光景がこれです。



 鑑賞者はマントを裏返し自分でテントを立て、その中に入るよう指示されるのです。

 ここに至ってタイトルの『Sit, Down. Sit Down Please』に思いあたります。鑑賞者は座らければテントの中に入れないからです。ちなみにこのテントはテントではなく古墳、つまりお墓だそうです。どうりで真っ黒なわけです。

 本稿を描くために泉さんの経歴を調べてみたのですが、どの作品も謎だらけです。それはまるで、人々に謎をかけて解けなかったら食い殺していたスフィンクスのようです。

 普通の展示会ならここまで書くとネタバレになってしまうのですが、泉さんの作品は説明しても伝わりません。会場に行って、自分でマントを身に着けて、テントを立てなければなりません。

 こうした作品に下手な解説は野暮というものです。ぜひ会場でご自身の目と身体で確かめていただければと思います。

東京オペラシティアートギャラリー
『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』展は3月26日(日)まで開催中です。
230210