現在、東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の「川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり展」を観てきました。



 川内さんは生命が持つ輝きや儚さ、力強さを取り続けている写真家です。本展は6年ぶりの個展だそうです。

 タイトルの「M/E」はMother Earthのこと。私(Me)という意味もあります。川内さんはこのタイトルをアイスランドの自然を撮影した時に、このタイトルが心に浮かんだそうです。



 川内さんの写真は一言でいえば自然の景色や事物を写した写真です。それは何かの物語の断章か大きな絵の断片のように見えます。何の物語なのか、何の絵なのかはわかりません。そこに鑑賞者の創造の誘う何かがあります。なぜそのように感じるのでしょうか。



 川内さんは撮影の対象をギリギリまで絞っています。余計な夾雑物は一切ありません。写真の純度が非常に高いのです。写真の枠組みと純粋な対象物の間にある余白に、私たちはまだ観ぬ物語が絵を創造するのです。作品タイトルがほとんど「無題」なのは、その大きな物語、大きな絵を鑑賞者にゆだねているからでしょう。

 このギリギリまで絞られた一枚を撮るためには、その一瞬をひたすら待ち続けるか、ひたすら撮り続けてその中から一瞬を選び取るか。いずれにしても膨大な忍耐か労力が必要なはずです。きっと川内さんは相当に辛抱強い方なのでしょう。

 シンプルかつ純度の高い写真は、観ている側も心が洗われたように感じます。写真家を志す方も学ぶところが多い写真展だと思います。

東京オペラシティ アートギャラリー
「川内倫子 M/E」は12月18日まで開催中です。
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