現在、アーツ千代田3331で開催中の「萩尾望都SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく展」を観てきました。


館内撮影コーナーより


 まず初めに。本展は原画展です。萩尾望都さん自身が紙に墨またはインクで描いた絵です。当然それぞれこの世に一枚しかありません。


 原画で見ると萩尾さんの瑞々しくシャープな線に圧倒されます。その線は今なお新鮮さを失っていません。その美しさだけでも目にする価値はあります。



同じく館内撮影コーナーより


 私にとって萩尾さんのSF作品と言えば「11人いる!」なのです。

 1975年に発表されたこの漫画は、恋愛漫画が大勢を占めていた少女漫画誌に忽然と現れた本格SF漫画でした。

 本展では原画とともにこの漫画のプロットを記した貴重な2枚の直筆メモが展示されています。このメモを観ると前半は不安、後半は安定という二つの軸を交互に交えることで作品の構成を考えていたことがわかります。萩尾さんはこのSF漫画の傑作を、純粋なSFではなく、群像の心理劇として考えていたのです。

 そうしてみると、萩尾さんのSF漫画には、SFにつきものの未来の世界とか、SF的な装備とか、科学的な設定などが詳しく書き込まれているわけではありません。それよりもむしろキャラクターそれぞれの心理を服装や背景で描くことに重きが置かれています。そここそが萩尾望都SF作品の魅力なのでしょう。

アーツ千代田3331
「萩尾望都SF原画展」
は7月24日まで。断言しますがファンなら必見の展覧会です。
220719