成瀬あかりは痛快で不可解です。

 宮島未奈さんの成瀬シリーズ三部作、「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」「成瀬は都を駆け抜ける」を読みました。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
 一学期の最終日である七月三十一日、下校中に成瀬がまた変なことを言い出した。
(「成瀬は天下を取りにいく」「ありがとう西武大津店」より)

 この第一作の冒頭だけで成瀬あかりは十分すぎるほど不可解です。夏を西武に捧げるとは全くもって意味不明です。しかし成瀬あかりはこの発言どおりのことをやり遂げます。その行動力が痛快極まりありません。

 この連作小説の面白いところは主人公が成瀬あかりでありながら、それぞれの小説の語り手は成瀬ではないところです。まわりの人間が観る成瀬あかりの生態が描かれるのです。友人知人だけでなく家族が観ても成瀬あかりは不可解です。そして知らず知らずのうちに成瀬あかりの不可解ペースに巻き込まれてしまいます。たぶんそれは成瀬あかりの強力な磁力がそうさせるのでしょう。

 成瀬あかりはあくまでも
ローカルヒーローです。数々の賞を受賞していますが、日本一というわけではありません。観光大使も「岐阜県」ではなく「大津市」です。だからこそ地元の人々とのふれあいが面白いのです。

 惜しむらくは三部作で完結ということです。成瀬あかりの活躍をもっと読みたいところです。でも一方で社会人になったりしている成瀬あかりが想像できません。芸能界デビューしているとか・・。

 2024年度本屋大賞はじめ数々の賞を受賞している本作。ふつうなら実写映画化かアニメ化の声がかかってもおかしくないと思うのですが、どうなのでしょう。アニメならざしきわらしさんの描くカバー絵の成瀬がイメージぴったりなので、その線でお願いしたいところです。一方、実写化となると誰を成瀬あかりに持ってくるか想像がつきません。みなさんはどう思われますか?
260206