スポーツチャンバラは、親子でできる、
世界の剣友とつながれる。
日本発祥のスポーツ、スポーツチャンバラ。子どもの時に時代劇やアニメを観て真似していた人もいるだろう。剣を持ち、かっこよく相手を成敗する、まさにあのチャンバラの動きで楽しめるスポーツで、実に50年以上の歴史を数える。空気で膨らませたエアー剣という柔らかい剣や楯など、用具は13種類。60㎝の「小太刀」から、1mを超える「長剣」などさまざまにあり、2つの用具を両手に戦ったり、異種格闘技のように違う用具の選手が戦う種目もあり、相手の体のどこに当てても「一本」と判定される。子どもも大人も同じサイズの用具を使い、試合も男女混合。スポーツ人口は現在、海外33カ国に広まり、国内の競技人口は約40万人といわれる。滋賀県内には6つの市に教室があり、100名弱が稽古に励んでいる。
スポーツチャンバラ(以下、スポチャン)協会が掲げる理念は『公平と安全、自由』。「一本については、「相手の一本が入りました」が重視される申告制。潔いことは武士の流れを組んでいます。「正々堂々」が基本ですから、女性でもお子さんでも、成人男性相手に自由にのびのび動くことを目指しています」そう語るのは、滋賀県スポーツチャンバラ協会理事長兼事務局長の羽根健人さん。自身も、母親の勧めで8歳でスポチャン出会った「身長や体型、動きの速さに応じて剣を選ぶことで、短所を補い強みにできる。勝つともっと面白くなる。そこが当時とても魅力的に映りました」。
2017年の滋賀県民大会で優勝し、県で唯一「錬士」の称号を与えられるなど、滋賀を代表するアスリートの一人だ。「大阪で剣を交えた女性の指導者は、まさに「柔よく剛を制す」という言葉がぴったり。私の手足の長さも、跳躍力も、瞬発力も、柳のようにかわされました。それぞれに合う技があることを再確認させていただきました」。
羽根さんが主催する「健心塾」には、健康維持、ストレス発散、護身術の習得、世界1位を目指したいなど、さまざまな動機の大人から3歳児までが通う。子どもが興味をもったことで問い合わせがあるが、見守る親の方も闘争心に火がつくのか一緒に入塾するケースも少なくない。「家族で一つの競技に一生懸命になれるスポーツは、あまりないのでは」と羽根さんは語る。
「スポチャンは、礼儀礼節を重んじています。戦う相手であっても、経緯と尊重の心を持ち、「稽古をさせていただく」という謙虚な姿勢を失わないこと。自分の中の「侮り」を厳に戒めています。大人であっても、他者に対しての侮りは許しません」。スポーツであり、武道のような礼儀や人となりの鍛錬をつむことができ、練習ではなく「稽古」という。気軽に始められて、他者を敬う心も養える。スポーツと武道のいいところを凝縮したような競技といえるかもしれない。
「世界大会が近い存在であることも、スポチャンからではの醍醐味。世界中で愛好されていて、剣を交えれば、戦友であり、親友になれる。唯一無二の出会いができます」。塾生からも、毎年のように世界チャンピオンを輩出している。女子高校生のチャンピオンは決勝で、海外の男性選手と剣を交えた。
滋賀を含む全国の協会が目指しているのは、スポチャンをオリンピック競技にすること。「難しいルールや長い期間の基礎習得などなく、簡単に始められて、イキイキできるのがスポーツチャンバラ。女性指導員もいますので、お母様方も一度ぜひ体験してみてください」。
【profile】
2014年発足、国際スポーツチャンバラ協会、(公社)日本スポーツチャンバラ協会、(公財)日本スポーツ協会に加盟