格闘家 高阪 剛 FILE No.50 ART STYLE | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

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「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

自分が今、やるべきことは何か。

格闘家として、これからも追及し続けたい。



格闘技ファンなら誰もがその名を知る“世界のTK”こと、高阪剛さん。総合格闘技団体「リングス」に入門後は、柔道仕込みの巧みなグランドテクニックとパワフルな打撃を武器に数々の好勝負を繰り広げた。昨年行われた現役最後の試合では、“サモアの怪人”との異名を持つマーク・ハントと対戦。惜しくもTKO負けとなったが、ハントのパンチを受けながらも前に進み攻撃し続ける姿に、ファンはもちろん、ライバル関係にあるファイターたちの心も揺さぶった。


中学卒業まで過ごした草津では、「自転車で琵琶湖タワーに行ったり、水晶山ででっかい紫水晶を採って学校で自慢したり、とにかく動き回るのが好きでしたねぇ(笑)」と、遊びで忙しい毎日だったとか。柔道を始めたのは中学から。男3兄弟の末っ子だった高阪さんは、兄たちより強くなりたいという一心で柔道にのめりこみ、さらに強くなるために総合格闘技の世界へ。

現在は総合格闘技道場「ALLIANCE-SQUARE」を拠点に後身の指導を行っている。「僕は今まで“強くなるため”だけにやってきました。しかし続けるうちに、自分を支えてくれる人たちに何かを返していきたい気持ちも出てきたし、自分を見て格闘技をやりたいという若い連中が集まったり、環境や心境に変化が表れてきたんですね。これは、自分が格闘技を続けてきたからこそ巻き起こったことだから、この現状に応えたい。僕は常に、自分の気持ちにできるだけ素直でありたいと思っていますから、自分が今しなければならないことをやっていこうと思ったんです」。

先輩として、指導者として、後輩たちに伝えたいのは一歩前に踏み出す気持ちの大切さ。これは、高阪さんがデビュー間もない頃、キックボクシングで8年間無敗の記録を持つモーリス・スミスとの試合に自ら志願したときに感じたことだという。「前田日明さん(リングス主催者)が“スミスと(試合)やりたい奴おるか?”と言った“か?”のところで手を挙げてたんです。自分でもびっくりするくらいの早さで(笑)」。一新人の気持ちを汲みとり、前田氏は試合をセッティング。猛烈なプレッシャーをはね除け、結果は高阪さんのギブアップ勝ち。一歩前に踏み出すこと、そしてその積み重ねが自分自身を築いていくと身を持って知ったこの出来事が、格闘家・高阪剛のその後に大きな影響を与えた。

選手時代の経験をもとに、多くの人々に“格闘技とは何か”を伝えて行くことが、これからの自分の役割と語る高阪さん。現在、東京のみで行われているセミナー『TK式格闘学会』も、今後は全国的に規模を広げていく予定だ。多忙な日々を癒すリラックス法は、週1回のバス釣り。「自然を前にすると、人間の思うようにいかないことが多いんです。
でも、そんな状況の中でも、自分がすべきことやどうあるべきかを考えなくてはいけない。これって格闘技にも通じるんです。自分が今やるべきことがわかってないと、格闘家は強くなれない。だから、できるだけ自分に素直になる。
格闘技と自然から、生き方の根本的なことを教えてもらっています」。

私生活でも、昨年一児のパパになり、「家族が増えて、もうひとつ役割が増えました」と語る高阪さん。

格闘家として、父として、これからもその凛とした生きざまを見せてくれることだろう。