スネルソンは
ネオンによるパブリックアートの第一人者スティーブン・アントナコスに紹介された。
アトリエがソーホーということもあり、同じくソーホー在住の友人バックスのアトリエに行った時はよく訪れた。
スネルソンが日本に初登場したのは、1970年の大阪万博だった。
ただ万博会場では、万博美術展での東野芳明が企画した
グループ展示「ホーム・マイホーム」に参画した
自分のテレビ作品とイサム・ノグチの噴水を見ただけだった。
スネルソンの作品を知ったのは、ワシントンのハーシュホーン美術館の
細長い円錐状の作品。ヒマラヤ杉かユリの木といった感じ。
アルミのパイプがステンレスワヤーで天に登って行く光景は、
インド魔術のロープが天に登る、重力に逆らう行為はまさに大発明だと思った。
半世紀以上たっても、世界中を見渡しても類型を見ない。
アトリエ
アトリエのケネス・スネルソン (c)s.higuchi
芸術家は自己と世界の混とんを一緒くたにしたスープを飲み干し、
白昼夢に浸れればラッキー。ほとんどは悪酔いに決まっている。
スネルソンはまったく正反対。明晰な科学者。
芸術家などという、行き当たりばったりのフィーリングに頼らない。
目的とそれを組み立てる素材の加工から図面まで、きっちり見通している。
スネルソンは地球上では重力という絶対的条件があるからこそ、
パイプを空中に放り投げ、それらをいかに固定させるのが発想の原点だろう。
そして彼のもう一つの表現360度写真。
カメラはファインダー内の一方向を切り取るだけだ、
しかし、地球は球体で端がない。
そこで考えたのが360度写真。
カメラを中心にぐるっと見えるものすべてを映し取る。
地球上での自己の立ち位置を知る。



