あ!っと北斎~みて、みつけて、みえてくる浮世絵~ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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この夏、すみだ北斎美術館で開催されるのは、

“あ!っと北斎~みて、みつけて、みえてくる浮世絵~”という展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

タイトルからして、普段より楽しげな雰囲気ですが、

会場内は輪をかけて、いつも以上に楽しげな雰囲気。

夏休み期間にピッタリな展覧会となっていました。

 

 

 

とは言え、楽しげだからといって、

決して、お子様だけをターゲットにした展覧会ではありません。

出展作品の中には、北斎の代表作中の代表作、

《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》はもちろんのこと、

 

 

 

北斎が40代前半ごろに手がけたという貴重な肉筆画なども含まれています。

 

葛飾北斎《魚介図》 すみだ北斎美術館蔵(前期)

 

ちなみに。

北斎による《魚介図》は初めて観ましたが、

特に惹きつけられたのが、アワビの表現でした。

 

 

 

独得のヌメッとした質感や、

磯の香りまでが感じられるくらいに、本物そっくり。

どうやったら、ここまで完璧に再現できるんだろう??

そう不思議に思っていたら、すぐ隣にその答えが展示されていました。

 

葛飾北斎『絵本彩色通』初編 すみだ北斎美術館(前期)

 

 

達筆すぎて、何と書いてあるかは、

イマイチよくわからなかったのですが(笑)

たぶんこの通りに描けば、あの再現度になるのでしょう。

 

 

さてさて、本展の最大の特徴は、

いつもの展覧会以上に、解説が丁寧なこと。

作品内にある北斎の仕掛けポイントに、

それぞれ「あ!wow」という解説が用意されています。

例えば、《新板浮絵両国喬夕涼花火見物之図》という作品には・・・

 

葛飾北斎《新板浮絵両国喬夕涼花火見物之図》 すみだ北斎美術館(通期※)

※半期で同タイトルの作品に展示替え

 

 

このようなキャプションが添えられていました。

 

 

 

パッと見、かつてのこの浮世絵の持ち主が、

鼻血でも吹きこぼしてしまったのかと思いましたが、

あの赤い部分は打ち上げ花火だったのですね。

 

この作品に限らず、本展の出展作品には、

すべてこのような丁寧な解説が付けられています。

個人的に一番ありがたかった「あ!wow」は、

《冨嶽三十六景 青山円座松》に関しての「あ!wow」。

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 青山円座松》 すみだ北斎美術館(通期※)

※半期で同タイトルの作品に展示替え

 

 

この浮世絵自体は何度か目にしたことがありましたが、

画面左下の松の部分に人が隠れていたのを、本展を通じて初めて知りました。

 

 

 

なお、展覧会の後半では、

複数の作品を見比べてみることで、

見つかる「あ!」の数々も紹介されています。

例えば、こちらは「冨嶽三十六景」シリーズのうちの2点。

“富士山が描かれている”以外にも、

この2点には共通点があるのだそうです。

 

 

 

正解は、“画面内にいくつも三角形が隠れている”。

確かに、言われてみれば、三角形がたくさんありますね。

もしかしたら、北斎はフリーメイソンの一員だったのかもしれませんね。

(注:すみだ北斎美術館の解説には、一切フリーメイソンのくだりは登場しません)

 

共通点といえば、《冨嶽三十六景 本所立川》と、

《百人一首宇波か縁説 権中納言定家》には共通するモチーフが。

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 本所立川》 すみだ北斎美術館(前期)

 

葛飾北斎《百人一首宇波か縁説 権中納言定家》 すみだ北斎美術館(前期)

 

 

それぞれの画面左にご注目。

木材と藁と素材こそ違いますが、

投げる人とそれを受け取る人が描かれています。

上の人が下の人に投げ渡しているのかと、

これまでなんとなく思い込んでいたのですが、

下の人が上に投げている可能性もあるのだそう。

つまり、そのようにして、どんどん高く積み上げているわけですね。

・・・・・じゃあ、上の人は最終的にどうやって下りるのでしょう??

 

 

また、見比べることで、違いを見つけるコーナーも。

 

 

 

どちらも、《冨嶽三十六景 常州牛堀》なのですが。

見比べてみると、彩色が違っていることがわかります。

右のは初摺に近いと考えられているもの。

藍一色で摺られています。

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 常州牛堀》 すみだ北斎美術館(前期)

 

 

一方、左のほうは後摺りで、藍以外の色も使われています。

 

葛飾北斎《冨嶽三十六景 常州牛堀》 吉野石膏コレクションすみだ北斎美術館寄託(前期)

 

 

人によって、好みがあるでしょうが、

僕個人としては、右の初摺に近いほうが好み。

左の色合いは、モノクロ写真をAIでカラー化したかのような印象を受けました。

 

北斎の作品内にある「あ!」を探したり、

作品同士を見比べて「あ!」と気づかされたり、

終始、能動的に楽しめる展覧会でした。

浮世絵鑑賞デビューしたい人にも、

浮世絵フリークの方にも、オススメです。

星星

 

 

ちなみに。

個人的にもっとも「あ!」となったのは、

『北斎漫画』十編を鑑賞していたときのこと。

 

葛飾北斎『北斎漫画』十編 すみだ北斎美術館(通期)

 

 

左ページの変顔6連発のインパクトが強すぎて、

これまでそこばかりフィーチャーされていた気がしますが。

改めて、右ページを観てみたところ、

江戸時代の謎の演芸が描かれていました。

 

 

 

地味にスゴいとは思いますが、

大盛り上がりするほどの技ではないような(笑)

しかも、ネーミングが「夢の浮橋」って。

 

 

 ┃会期:2025年6月24日(火) ~8月31日(日)

 ┃会場:すみだ北斎美術館
 ┃https://hokusai-museum.jp/modules/Exhibition/exhibitions/view/4329

 

 

 

 

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