現在、ポーラ美術館では“ゴッホ・インパクト”が絶賛開催中ですが。
それとは別に、美術館全体を使って、
イギリスを代表するコンセプチュアル・アーティスト、
ライアン・ガンダーによる最新個展も開催されています。
その名も、“The Waiting Room”です。
・・・・・・と思ったら、こちらも作品の一つで、
ガンダー自身が制作した架空の展覧会ポスターとのこと。
本当の展覧会名は、“ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー”でした。
まず、二重になった(?)デジタル時計が、
入り口の上部に掲げられた展示室に入ると・・・・
思わぬ光景が目に飛び込んできました!
床一面にびっしりと何やらが敷き詰められています。
誤って踏みつけてしまわないように、
恐る恐る屈んで、よく観てみると、その正体は・・・・・
無数の小さなおもちゃでした。
正確に言うと、使われなくなったおもちゃと、
バラバラになったゲームの部品、ガンダー自身が制作したおもちゃ、
その3種類がランダムに、一列ずつ綺麗に並べられています。
ガンダーには自閉スペクトラム症の息子がおり、
普段から彼は、よくおもちゃを1列に並べているのだとか。
そんな息子の行動からインスピレーションを受けて制作した作品なのだそうです。
さて、びっしり敷き詰められているといえば、
展示室4の展示ケース内にも、あるものがびっしりと敷き詰められていました。
それは、大量の黒いボール。
しかも、それぞれに何かが書かれています。
こちらは、《おばけには歯があるの?(答えばかり求める世界での問い)》という作品。
ガンダーの子どもたちが考えた質問や指示が、
それぞれ黒いボールの表面に書かれています。
なお、テキストはすべて違うのだそう。
さだまさしの歌詞くらいに、質問の多い作品です。
なお、現在、ポーラ美術館の館内には、
このうちの3つを巨大化させたものが点在しています。
2つは美術館のロビーに、
そして、1つはカフェ内に設置されていました。
ちなみに。
この巨大なボールを設置したために、
カフェ内の席数が通常より減っているのだそう。
そこまでしてでもボールをここに設置したポーラ美術館の本気度に拍手です。
さてさて、展覧会には他にも、
観葉植物の鉢の上で喋り続けるカエルや、
哲学的な会話をする2匹のネズミなど、
ライアン・ガンダーの代表的なシリーズの一つである、
リアルな動物ロボットを駆使した「アニマトロニクス」の作品も出展されています。
そのうちの1つが、《すべてはカウントされている》という作品。
展示ケースの一角に、1匹の蚊が落ちています。
あまりに小さいので、よほど注意深く探さないと見逃してしまうことでしょう。
なお、本来はピクピク動いているものなのだそうですが、
僕が目にした時は、ロボットの調子が悪く、微動だにしませんでした。
ポーラ美術館は自然環境が豊かな場所にあるので、
目にした瞬間は、本物の蚊の死骸かと思ってしまいました(笑)。
ちなみに。
本展のオリジナルグッズは多数ありましたが、
この蚊の作品にちなんで、蚊取り線香が売られていました。
蚊取り線香が展覧会グッズになるなんて、
おそらくこれが最初で最後の機会でしょう。