currents/undercurrents | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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青森公立大学 国際芸術センター青森、通称ACACに行ってきました。


 

 

入り口の脇に置かれていたのは、日本代表として、

1990年のヴェネチア・ビエンナーレに参加した彫刻家、村岡三郎の《SALT》という作品。

鉄製の巨大なボックスの内部にはタイトル通り、岩塩が封じ込められているようです。

それゆえ、溶けた塩により、鉄が酸化&腐食が進み、

2002年の作品とはとても思えないほどの風化具合となっていました。

 

なお、《SALT》以外にも、ACACの広大な敷地内には、

淺井裕介さんや河口龍夫さんらによる野外作品が22点ほど点在しています。

 

 

 

さてさて、ACACこと、青森公立大学 国際芸術センター青森とは、

青森市市制100周年記念事業として、2001年に開館した現代芸術のアートセンターです。

建築を手掛けたのは、安藤忠雄さん。

八甲田山麓の自然環境を最大限に配慮し、

建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとしたのだとか。

 

こちらの建物は、ACACのメインとなる展示棟。

 

 

 

入り口から一見しただけの印象では、

コンクリート打ち放しのシンプルな建物に思えますが。

建物を上から見ると、視力検査のランドルト環(Cマーク)にようになっており、

その中心部には300名収容できる野外ステージや水のテラスが設けられています。

 

 

 

・・・・・と、このように引きで見れば、

ダイナミックでかなり個性的な建築なのですが。

引きだと、人物を入れた写真には不向きなのでしょう。

ACACを紹介する記事でよく使われているのは、

こちらの入り口と展示棟を結ぶ「四季のアーケード」で撮影した写真です。

 

 

 

実際、僕が訪れた日も、来館者の多くが、

こちらのアーケードで写真撮影を楽しまれていました。

 

さてさて、そんなACACで現在開催されているのが、

“currents/undercurrents-いま、めくるめく流れは出会ってという展覧会。

 

 

 

currents(=海流や電流、水や空気などある一定の方向に動く流れ)」と、

undercurrents(=目に見えにくい流れや暗示)」をキーワードに、

国内外で活躍するアーティストの作品を紹介する展覧会です。

 

 

 

出展作品の中には、青森出身の日本を代表する戦場カメラマン澤田教一の写真や、

 

 

 

本展のために3ヶ月近くの滞在制作を行ったという、

パレスチナ系カナダのアーティスト、ジュマナ・エミル・アブードによる作品群、

 

 

 

さらに、作家による作品ではないですが、

青森市教育委員会が所蔵するアイヌの衣服も含まれていました。

 

(実は北海道だけでなく、青森県域にもアイヌの文化が根付いていたのだとか)

 

 

参加作家の中には、「なおす」という行為をテーマに制作している青野文昭さんも。

本展では、青森市内で集めた箪笥や本棚を積み上げた巨大な作品を発表しています。

 

 

 

全体的には、どこか牧歌的で、

ユーモラスな印象もありましたが。

 

 

 

不用品となったものたちの魂(?)が、

具現化?付喪神化したようにも思えてきて、

そこはかとない薄気味悪さのようなものも同時に感じられました。

星

 

 

また、出展作品で他に印象的だったのが、

写真家・岩根愛さんによる《The Opening》という映像作品です。

 

 

 

近年、岩根さんは高校時代を過ごしたという、

カルフォルニアにあるマトール川を撮影しているそうで、

プロジェクションされていたのは、その川をドローンで撮影したもの。

なんでもマトール川は1年に1度決壊するそうで、

その際に、川と海がぶつかり大きな渦が発生するのだとか。

この作品はプロジェクションの上に立つことも可能。

川が決壊する様子を追体験することができます。

せっかくなので、追体験してみたところ、

思いっきり船酔いしたような感覚に陥りました。

船が苦手な人は体験しないことを強くオススメします(笑)。

 

体験型と言えば、こんな作品も。

 

 

 

光岡幸一さんの《おらふぁせ》という作品です。

餃子のような形をした謎の物体が、横たわった人型に並べられています。

 

 

 

備え付けられたキャプションには、今パッと思い付く、

「やらなければならないけど、やっていないこと」の数だけ、

この謎の物体を手にして、建物の反対側にあるオブジェに向かうよう指示がありました。

ということで、1つだけ手にして、オブジェのもとへ。

 

 

 

どうやらあの的に向かって投げて、

その下にある壺に入れるみたいです。

距離と高さはそれなりにありますが、

まったく当たらないなんてことはないはず。

自信満々に謎の物体を投げました。

 

 

「スッ・・・」

 

 

まったく、かすりもせず。。。

自信満々だったさっきまでの自分が恥ずかしくなりました。

当たったら、どんな音が鳴るのでしょうか?

当てたかったです。いや、アートテラーとしては、当てるべきでした。

「やらなければならないけど、やっていないこと」が一つ増えてしまいました。

(ちなみに、落ちてしまった謎の物体は、いずれ土に還るそうです)

 

 

 

 

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