東京都現代美術館が所蔵するコレクション、
通称MOTコレクションをさまざまな切り口で紹介する“MOTコレクション”。
その最新版のテーマとなるのが、「竹林之七妍」です。
俗に、「竹林の七賢」とは、中国・晋の時代に、俗世間を避けて、
竹林に集まっては、酒や琴を嗜み、清談したという7人の賢者のこと。
しかし、本展は「七賢」ではなく「七妍」。
竹林の七賢を女体化(?)させた、
河野通勢の《竹林之七妍》という作品に由来するものです。
というわけで、本展では、7人の女性作家、
それも、紹介される機会が少なかった(=竹林にいた?)女性作家が紹介されています。
例えば、京都に生まれ、京都で活動した高木敏子。
オブジェ焼きで有名な八木一夫の妻にして、
日本におけるファイバーアートの先駆者とされる人物です。
また例えば、前本彰子さん。
80年代アートを象徴する「ニューウェイブ」や、
「超少女」の中核を担ったアーティストの一人です。
他にも、生誕100年を迎えて、
今静かに注目が集まっている間所(芥川)紗織や、
「実験工房」の創立メンバーだった福島秀子などが紹介されていました。
今回の「竹林之七妍」の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、こちらの人物。
戦後から2000年代まで活動した銅版画家、その名も小林ドンゲです。
もちろん「ドンゲ」は本名ではなく、
弟の囲碁仲間であった僧から贈られた名前だそうで、
3000年に一度咲くという伝説の花、優曇華(うどんげ)に由来しているのだとか。
なお、銅版画は、関野凖一郎と駒井哲郎に師事。
文学や能への造詣も深く、あの詩人の堀口大學にも師事していたとか。
さて、気になるその作風は、と言いますと・・・・・
ビアズリーと上村一夫と宇野亜喜良さんをミックスさせたような。
耽美で妖艶でスタイリッシュな作風でした。
万人受けというタイプではないですが、
一定の層にカルト的な人気を博しそうな作風。
本展を機にブレイクする可能性も無きにしもあらずです。
ちなみに。
あきらかにルドンの影響を受けた作品もありました。
、
観れば観るほど、ゾッとする1枚。
なぜだか、放送に目が開いた生首の絵を連想してしまいました。
さてさて、MOTコレクションでは現在、
芸術家の野村和弘さんの作品群も併せて展示しています。
野村さんの作品はコンセプチュアルなものが多く、
正直なところ、説明が無いと何が何だかよくわかりません。
説明が無い作品が大半だったので、
何が何だかわらずじまいのものばかりです(笑)。
ただ、わからなくても、なんかオモシロかったのは《リング・チェーン》。
これはおそらく、ただ単純に、
指輪をたくさん繋げて、チェーン状にしたものなのでしょう。
その無駄とも思える労力に、拍手を送りたいと思います。
それからもう一つオモシロかったのが、
観客参加型のインスタレーション作品《笑う祭壇》です。
ルールは、いたってシンプル。
一般の方から無償で提供してもらったボタンを・・・・・
白線の外から投げて、祭壇を思わせるオブジェの上に乗せるというものです。
しかし、オブジェの上の皿は小さく、
その上にボタンを乗せるというのは超高難度。
当然、投げれば投げるほど、ボタンは床に散らばっていくわけです。
会期の終盤に近づけば近づくほど、
床がボタンで散乱した状態になることでしょう。
なお、MOTコレクションでは他にも、
別の切り口で、さまざまな作品が紹介されています。
MOTコレクションの中で開館以来、
唯一不動で展示され続けている宮島達男さんの作品は・・・・・
開館以来初めて、自然光を一部取り入れる形で展示されていました。
(これまでは真っ暗な空間で展示)
ちょっとした変化ではありましたので、
ちょっとした新鮮味を感じることができました。
また、近年新たにコレクションに加わった長谷川繁さんの絵画も、
作家が所蔵する関連作品38点とあわせて一挙に展示されていました。
作品よりも気になってしまったのが、
約3mの巨大な2点の犬の絵に付けられたタイトル。
左が、《法被威穂猥屠摩訶論ちゃん》で、
右が、《楽奇異庶虎羅呉無武流麗ちゃん》とのこと。
それぞれ「ハッピーホワイトマカロンちゃん」、
「ラッキーショコラクレームブリュレちゃん」と読むそうです。
昭和のレディースか。