広島県大竹市にある話題の人気スポット、
下瀬美術館が、めでたく開館1周年を迎えました!
それを記念して、この春開催されているのが、
戦後の日本画壇を牽引した加山又造にスポットを当てた展覧会です。
京都に生まれ、東京の画壇で活躍した加山又造。
広島県とは特に縁が無いイメージがありましたが、
実は、加山又造の父方の祖父に当たる田辺玉田は、
広島を中心に活躍した日本画家だったのだそうです。
さらに、学生時代の加山が、終戦を迎えた場所は、
下瀬美術館のある広島県大竹市のお隣、山口県岩国市の周防大島だったようで。
そこから、広島に落とされた原爆を見て、大きなショックを受けたそうです。
そう言う意味でも、広島県とは切っても切り離せない人物だったのですね。
さて、本展に出展されている加山作品は、
下瀬美術館のコレクション作品を含む約20点。
それらの中には、シュルレアリスムの影響が見て取れる貴重な初期の作品や、
中国の北宋画に挑んだ後半生の傑作、
さらには、陶芸家とのコラボ作品といったものも含まれています。
なお、加山又造作品の中でもとりわけ人気の高い、
猫をモチーフにした作品も、もちろん出展されていました。
加山又造の猫作品というと、なんとなく、
いつも同じポーズを取っている印象がありましたが。
実は、これらの作品は、ポーズを取った猫の型紙を使って描いているそう。
あまりに人気でオーダーが多かったため、加山自身が編み出した技法なのだとか。
と言っても、決して手を抜いているわけではなく!
猫の毛並みはすべて手作業で、
金泥を使って1本1本描かれています。
圧倒的なモフモフ感の正体は、超緻密な筆さばきだったのですね。
また、桜をモチーフにした作品にも、ある技法が用いられているそう。
桜の花びらを、1枚1枚描くのでなく、
伊勢型紙で桜を作り、それを使って描いたのだとか。
型紙をただ使うのではなく、
濃淡を効果的に用いることで、
絶妙なニュアンスを表現しています。
型紙を使うという発想は、工芸家に近いような。
日本画と工芸の二刀流、それが加山又造です。
ちなみに。
本展の出展作品の中で最も印象に残ったのが、《蒼い日輪》です。
こちらは、いわゆる「日本画滅亡論」が唱えられていた時期に描かれた作品。
瘦せ細ったカラスは、若き日の加山自身が投影されているそうです。
今から65年近く前の作品とは思えない斬新さ。
ティム・バートン作品や、『DEATH NOTE』のリュークを彷彿とさせるものがありました。
それからもう1点印象的だったのが、
70代後半に描かれた大作《黄山雲海》です。
加山は1975年より、たびたび中国を訪れていたそう。
そして、山水画に描かれるような山々を実際に何度も取材していたそうです。
本展では、その時の記録映像も紹介されていたのですが、
あまりにも行程がハードすぎて、ガチの登山家のドキュメントを観ているようでした。
あれほどの経験をしたからこそ、《黄山雲海》には絶対的な説得力があるのでしょう。
これまで中国の山水画を観ても、特に何も思いませんでしたが、
《黄山雲海》に向き合った際には、本当に大自然と対峙している気分になりました。
あと数分向き合っていたら、「ヤッホー!」と叫んでしまっていたかもしれません。
なお、本展では加山作品だけでなく、下瀬美術館のコレクション作品の中から、
加山と交流のあった小磯良平の作品や、同時代の日本画家の作品も紹介されています。
さらに!
展示室内だけでなく、水板にも加山又造作品が設置されています。
水の上に浮かべてしまって大丈夫なの?!
と、心配になったかもしれませんが、ご安心を。
こちらは、大塚オーミ陶業の技術で作られた加山又造の陶板作品です。
外に設置していても、大丈夫。
もし、雨が降っても、まったく問題ありません。
ちなみに。
こちらの陶板作品は、夜はライトアップされます。
こんな感じに。
会期中の金土日は、ナイトミュージアムが予定されているとのこと。
せっかくならば、ライトアップした姿も楽しみたいところです。