アニッシュ・カプーア_ 奪われた自由への眼差し_ 監視社会の未来 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、表参道のGYRE GALLERYで開催されているのは、

“アニッシュ・カプーア_ 奪われた自由への眼差し_ 監視社会の未来という展覧会。

インドに生まれ、現在はイギリスに拠点を置く、

世界的アーティストのアニッシュ・カプーアの最新個展です。

 

 

 

本展のテーマは、「監視社会」。

目に見えない監視体制で監視される側が、芸術表現をどのように捉えていくのか。

そんなことを問いかける展覧会であるようです。

・・・・・ちょっと何言ってるかわからないですが。

 

ちなみに。

展覧会の冒頭にあるステートメントは、

ちょっとどころか、ほぼほぼ何言っているかわからなかったです(笑)。

 

功利主義をとなえ「最大多数の最大幸福」をめざして刑務所を設計した
イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムは、パノプティコン(一望監視)を構想した。
そして、ミシェル・フーコーは、 一望監視が滲透し「監視社会」によって
まさに現代の「監獄の誕生」を予見したのである。

 

とか。

 

監視の下で統制されている人々が、

自らに内在しているカオティックな情動に気づかされていないが、
作品を見ることで自らのカオス(不条理)と対峙せざるを得なくなり、
その存在に気づかされるという展覧会構造になっている。

 

とか。

頭のいい人が、頭のいいことを言っているくらいはわかりました。

 

 

さてさて、肝心のカプーアの作品ですが、

本展ではコロナ以降に描かれた油彩やグワッシュの絵画が出展されています。

 

 

 

まるで血が噴き出しているかのような。

あるいは、マグマが噴き出しているかのような。

不穏な空気がヒシヒシと伝わってくる作品ばかりでした。

カプーア自身は決してそういう人間ではありませんが、

シリアルキラーが描いた絵のように思えてしまいました。

 

 

 

ただ、これらの絵画作品以上に、

展覧会場で異彩を放っていたのが、謎のオブジェ。

 

 

 

肉片のような。

臓器のような。

怪物の第1形態のような。

 

 

 

その正体はおそらく、

絵の具とまるまったキャンバスでしょうが。

そうとわかった上で見ても、

グロテスクで禍々しさがハンパありませんでした。

しかも、そんなオブジェが会場のあちこちに、

設置されて・・・・・いや、こびり付いています。

 

 

 

殺人現場や屠殺場を彷彿とさせるものがありました。

もしくは、『バイオハザード』の世界のような。

終始、会場には不穏で殺伐とした空気が流れています。

このインパクト抜群のオブジェクトによって、

壁に掛けられていた絵画作品の印象は、ほぼ搔き消されました。

 

 

 

そもそもこの展覧会のテーマである「監視社会」うんぬんも搔き消されていたような。

良くも悪くも、この異様なオブジェの印象しか残らなかった展覧会でした。

星

 

 

なお、展覧会の鑑賞から数日経ちましたが、

まだオブジェのインパクトは薄れていません。

しばらく、記憶の片隅にこびり続ける気がします。

 

 

 

 

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