エントリーNo.0013 バーストランド(岡本太郎 イサム・ノグチ) | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

もしも、芸術家たちが漫才をしたら・・・

こんな感じのネタを披露するのかもしれません。
それでは、皆様、どうぞ芸術漫才をお楽しみください!

 

 

 

岡本太郎[1]「どうも~、バーストランドです。よろしくお願いします~。
      ありがとうございます~。頑張っていきましょう」

 

イサム・ノグチ[2]「いきなりなんですけどね。あるなしクイズってあるでしょ?」

 

太郎「あー、ありましたね」

 

イサム「あれのオリジナル作ったんですよ。やります?」

 

太郎「ピアノとスキーだけでなく、

   クイズも得意[3]なんで、ちょっと出してみてください」

 

イサム「まずね。画壇にはあるけどサロンにはない」

 

太郎「画壇にはあるけどサロンにはない。はい、わかりました」

 

イサム「まぁまぁまぁ、まだ1個目だから」

 

太郎「1個目で分かったから。別にいいでしょ、1個目で分かったんだから!」

 

イサム「じゃあどうぞ」

 

太郎「媚び」

 

イサム「何でですか?」

 

太郎「俺が作った『夜の会』[4]のメンバー内では、誰も媚びなんて売らないけど。

   画壇にいる人間は媚びばっか売ってるから!

   正解は、媚びだろ!」

 

イサム「あー、違います」

 

太郎「画壇なんて媚びしかないんだから!

   絵が上手いとか、工芸の技術があるかとか、

    そんなのは全然関係なくて、どれだけ審査員に媚びを売ったか。

    それで受賞が決まるんだから。 

   あと、うちの美術団体は、公正に審査していますよー、

   ってアピールをするためだけに、アイドルに賞を与えたりするんだから。

   そうやって、アイドルにも、アイドルのファンにも媚びを売ってるんだから!

   正解は、媚び!」

 

イサム「違います」

 

太郎「いいや!媚び!」

 

イサム「いいやってことはない」

 

太郎「違うの?」

 

イサム「違うよ」

 

太郎「ほんじゃもう次行ってくれ次」

 

イサム「えー、伝統にあって革新にない」

 

太郎「伝統にあって革新にない。はい、わかりました」

 

イサム「じゃあどうぞ」

 

太郎「えー、マンネリ感!

   ただ伝統だからって理由で、何の疑いも無く、

   毎年同じことばっかりしてるのにはマンネリ感を覚えるから。

   正解はマンネリ感だろ!」

 

イサム「違いますし、そんなことないでしょ」

 

太郎「いいやマンネリ感だよ。

   伝統をただ受け継ぐだけなんて、何の創造性もないんだから!

   世界最古の木造建築の法隆寺だって、焼けたら焼けたでいいんだから!

   その時は俺が法隆寺になるから![5]

 

イサム「言ってること意味わからないし、違います」

 

太郎「マンネリ感だろ」

 

イサム「じゃあ、画壇にもマンネリ感がある・・・」

 

太郎「マンネリ感あるに決まってんだろ!

   毎年毎年、同じような作品しか飾られてないんだから!

   今年のトレンドとかまったく無いんだから!

   マンネリ感だろマンネリ感」

 

イサム「違うって言ってる」

 

太郎「ほんじゃ、もう次行ってくれ次」

 

イサム「グッズにはあるけど、一点モノにはない」

 

太郎「はい、これわかりました」

 

イサム「じゃあどうぞ」

 

太郎「正解は芸術性!
   なぜなら、大衆が手に取ることができるグッズにこそ芸術性が必要だけど。

   金持ちに買ってもらうために描かれたような1点モノ、

   銀行預金のようにしまっておくための芸術なんて必要ないから、正解は芸術性![6]

 

イサム「あー残念違います」

 

太郎「そうかー!

   大衆的な仕事はしないって変なポリシー持ったうぜー芸術家とかいるかー!

   やめてくれー!

   ゴミみたいな芸術品を量産しながらも、

   1点モノだからって、何百万もの価格を付けるのやめてくれー!

   アートをよくわかってないお金持ちに作品を売りつけるのやめてくれー!!

   そいつの作品を所有することがセレブのステータスみたくなるのやめてくれー!

   セレブのステータス!」

 

イサム「答え?」

 

太郎「セレブのステータス!」

 

イサム「そんなわけないでしょ」

 

太郎「違うの?」

 

イサム「違うよ」

 

太郎「ほんじゃもう次行ってくれ次」

 

イサム「じゃあ大阪万博にあって東京五輪にない」

 

太郎「はい透明性!」

 

イサム「そんなことない」

 

太郎「透明性!文化度!祝福ムード!

   いやいやそうだよ。

   万博は皆が熱狂してるけど、

   東京五輪なんて始まる前、しらけムードだったんだから!

   あと、終わってからいろんな人が捕まってるし。透明性!」

 

イサム「当てる気ないでしょ?」

 

太郎「当てる気あるよそんなの」

 

イサム「自分の気持ち言ってません?」

 

太郎「自分の気持ちじゃない。クイズに正解したいだけだから!
   次行ってくれ次!」

 

イサム「じゃあ縄文土器にあって弥生土器にない」

 

太郎「はい、人間に於ける根源的情熱!生命力!

   それに比べて、弥生土器や埴輪なんて、

   シンメトリカルな形式主義で卑弱で、奴隷的諦めしか感じられないんだから。[7]

   そうだろうが!」

 

イサム「結局どれなの?」

 

太郎「ウザい!ある方は全部ウザい!」

 

イサム「大阪万博も?」

 

太郎「大阪万博もウザい!
   『人類の進歩と調和』っていうテーマがウザい!
  人類は進歩なんてしてないんだよ!
  あと、調和?お互いに頭を下げあって、

  相手も六割、こっちも六割、それで馴れ合っている。

  そんなものは調和じゃないから!

  ポンポンとぶつかり合って、その結果、成り立つものが調和なんだよ![8]
  あと、次の万博のキャラもウザい!

  ミャクミャク様って崇めてる感じもウザい!

  ウザいウザいウザい!ある方もない方も両方ウザい!

 

イサム「あるなしクイズにならないじゃないですか」

 

太郎「じゃあ正解何なんだよ?」

 

イサム「正解の頭文字全部、濁点になってるっていうね」

 

太郎「クソつまんねえじゃねえかよ!もういいわ!
   どうもありがとうございました」

 

 

[1]岡本太郎(1911~1996) 

   漫画家・岡本一平、小説家・岡本かの子を両親に持つ昭和を代表する芸術家。

   代表作に《太陽の塔》《明日の神話》

   出演したTVCMでのセリフ「芸術は爆発だ!」は1986年の『新語・流行語大賞』となった。

 

[2]イサム・ノグチ(1904~1988)

   “地球を彫刻した男”とも称される20世紀を代表する彫刻家。

   最晩年に基本設計に携わった札幌のモエレ沼公園は、彼の最高傑作と名高い。

   1950年に初めて出会ったイサム・ノグチと岡本太郎は、

   ともに海外の視点を持ち、日本へ深い関心をがあったことから、すぐに打ち解けたとか

 

[3]ピアノもスキーも独学ながら、その腕前はプロ級だったという

 

[4]岡本太郎と評論家の花田清輝が発起人となって、

   1948年に結成された文学と美術のジャンルにまたがる前衛芸術の研究会

 

[5]1956年に刊行された『日本の伝統』において、

  法隆寺金堂が焼失した件を取り上げ、このように述べている

 

[6]岡本太郎の根幹にあったのが、「芸術は大衆のもの」という思想。

  そのため、生前は絵を売らなかった。

  画家としての価値が下がるという周囲の意見を無視して、ウイスキーのオマケをつくったのもそのためである。

 

[7]岡本太郎はたびたび縄文文化を礼賛する文章を発表している。

   反対に弥生文化には厳しかった。

 

[8]テーマ館のプロデューサーに任命されるも、

  「人類の進歩と調和」というテーマに反対だった太郎は、そのアンチテーゼとして、《太陽の塔》を制作した。





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