ボイス+パレルモ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、埼玉県立近代美術館では、

“ボイス+パレルモ” という展覧会が開催されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

こちらは、戦後の美術界においてもっとも重要な存在の1人として知られ、

「人は誰もが芸術家である」 という言葉を残したドイツのカリスマ芸術家ヨーゼフ・ボイスと、

その教え子で、わずか33歳という若さでこの世を去ったブリンキー・パレルモの2人展です。

ボイスが日本の美術館で大々的に取り上げられるのは、実に10年ぶり。

パレルモが日本の美術館で取り上げられるのは、なんと初めてとのことです。

星

 

 

「社会彫刻」 という全く新しい美術概念を提唱し、

立体やパフォーマンス作品を多数制作したボイス。

その一方で、教育者として、ゲルハルト・リヒターなど多くの芸術家を育てました。

中でも、特に愛弟子だったのが、今回のもう一人の主役パレルモだったそう。

ちなみに、パレルモの本名は、ベーター・シュヴァルツ工。

ボイスに学んでいた際、クラスメイトに、

 

「アメリカ人ボクシングのプロモーターのフランク “ブリンキー” パレルモに似てね??」

 

と言われたことから、いつしかそれが定着し、活動名となっていったようです。

本名が 「大山敦士」 なのに、「とに~」 っぽいと理由だけで、

「とに~」 という名前が定着した某アートテラーと似たものを感じますね。

 

と、それはさておき。

展覧会の会場には、国内外から集められた、

ボイスとパレルモの貴重な作品がシームレスに展示されています。

 

 

 

どちらも、作風としては大人しめではありますが。

改めて、2人の作品を並べてみると・・・・・

 

 

 

ボイスの作品の方が、主張強めに感じられました。

一見シンプルに感じられるものの、

観客や社会に訴えかけてくるのが、ボイスの作品。

 

 

 

対称的に、主張は控えめで、

シンプルを極めていたのが、パレルモの作品です。

 

 

 

かといって、ミニマリストの作品のような、

カッチリとしたシンプルさではなく、どこか隙のようなものが感じられました。

 

 

 

ユーズド感があるといいましょうか。

決して新品ではなく、着こなされている感じといいましょうか。

どことなく、骨董品のような佇まいもあり、

我ながら妙な感想ですが、茶室に合いそうな印象を受けました。

 

 

ちなみに。

数あるパレルモ作品の中で印象に残っているのは、

青と黄色の2色のみで構成された 《無題》 でしょうか。

 

 

 

初めて目にする作品なのに、

何度も目にしたことがあるような。

不思議なデジャヴを覚えました。

しばらくして、「あっ、アルソックだ!」 と、

デジャヴの正体を明らかにすることができました。

 

 

一方、パレルモの恩師ボイスの作品で印象的だったのは、

やはり日本初公開となる彼の代表作の一つ、《ユーラシアの杖》 でしょう。

 

 

 

ボイスが素材として多用したフェルトで

4mほどの木材と金属の棒を包み、壁に立てかけた作品です。

もともとは、《ユーラシアの杖》 という同名のパフォーマンスで使用されたもの。

そのパフォーマンスでボイスは、捏ねた脂肪の塊を部屋の隅に固め、歩き回ったそうです。

そして、床に寝かせてあったこの4本の木材を、

柱のように四隅に立てては、金属の棒で触れたのだとか。

ボイスは4本の木材を空間に立てかけることで、ユーラシア大陸を構成する、

ヨーロッパとアジアという東西の文化圏が1つになった状態を表現したそうです。

 

 

 

なんそれ!

 

言ったもん勝ちといいますか、何といいますか。

いや、もしかしたら、僕みたいに捻くれていない、

心のピュアな人間であれば、この木材からユーラシア大陸が感じられるのでしょう。

 

アートの魅力を伝える身として、精進せねば!

声なきボイスの作品から、ボイスの主張を読み取ってみよう。

会場の一角にあったこの作品で、リベンジしてみることにしました。

 

 

 

この世とあの世とを結ぶ階段を表現しているのか。

はたまた、階級社会を表現しているのか。

もしくは、設置されている場所に意味があり、

無価値な労働というものを表しているのかもしれません。

などと、うんうん考えていたら、

館の人に、「それ作品じゃないですよ」 と言われました。

ぎゃふん。





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