蘭字―知られざる輸出茶ラベルの世界― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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環状七号線、通称環七沿いにある齋田記念館。

江戸時代には世田谷代田村の名主をつとめ、
明治以降は茶業の発展に貢献した齋田家に残る資料を公開する資料館です。

そんな齋田記念館で現在開催されているのが、

“蘭字―知られざる輸出茶ラベルの世界―” という展覧会。

東京では初となる蘭字にスポットを当てた展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

蘭字とは、明治から大正にかけて、

主にアメリカに向けて輸出された茶箱に貼られたラベルのこと。

西洋風の字体 (フォント) で書かれているから、蘭字です。

 

そんな蘭字が貼られていたのは、茶箱の縦長の側面。

それと、茶箱を保護するために巻くアンペラ、

(=安平。ゴザのようなもの) にも同じものが貼られていたそうです。

 

 

 

↑ちなみに、この茶箱とアンペラのセットは、

近年ニューヨークで発見され、日本に里帰りしたものとのこと。

茶箱もそうですが、それ以上に、アンペラは、

輸送が終わると当時に廃棄されてしまうため、

実際に輸出された茶箱とアンペラがセットで残っているのは、相当の奇跡なのだとか!

会場にさらっと展示されていましたが、

現時点で世界中にこの1セットしか確認されていない代物なのだそうです。

 

なお、茶箱をよく見ると、横長の側面のほうには、

浮世絵のような絵が貼られていることに気が付きます。

こちらは、蘭字ではなく、茶箱絵です。

 

 

 

そんな茶箱絵を特に多く手掛けていたというのが、二代目歌川広重。

それゆえ、彼は 「茶箱広重」 とも呼ばれていたそうです。

 

 

・・・・・と、それはさておきまして。

今回の主役は茶箱絵ではなく、あくまで蘭字です。

会場には、アドミュージアム東京が所蔵するものを中心に、

色とりどり、さまざまなタイプの蘭字がズラリと並べられていました。

 

 

 

富士山や桜、日の丸など、

 

蘭字 《KANAYA CHOP》 アドミュージアム東京蔵

 

蘭字 《SHIZUOKAKEN URON& co.》 個人蔵

 

 

日本ならではのモチーフが描かれた蘭字ももちろんありましたが。

紹介されていた蘭字のうちの半数くらいは、

日本的なモチーフが描かれていませんでした。

 

 

 

中には、こんな蘭字も。

 

蘭字 《PRIDE OF CANADA(ビーバー)》 アドミュージアム東京蔵

 

 

描かれているのは、ビーバーです。

パッと見、日本茶感は全然ありません。

しかも、ブランド名は、

「PRIDE OF CANADA」 となっています。

日本茶よりも、ジンジャーエール感のが強かったです。

 

それから、こんな蘭字もありました。

 

蘭字 《BOSS OF THE ROAD》 アドミュージアム東京蔵

 

 

・・・・・・いや、どういう状況なん??

思わず馬車が道を譲ってしまうほど、

王道中の王道ど真ん中の味わいの日本茶ってことなのでしょうか。

 

 

お恥ずかしながら、今日の今日まで、

蘭字の 「ら」 の字も知りませんでしたが。

この蘭字の展覧会を通じて、

日本におけるグラフィックデザインの元祖ともいうべき、

蘭字のその奥深い世界にすっかり魅了されてしまいました。

星

 

もっと蘭字が観たい。

なんなら、蘭字が欲しい。

そう思っていたら、こんなオリジナルグッズを発見してしまいました。

 

imageimage

 

 

齋田記念館が所蔵する齋田雲岱の 『博物図譜』 を、

蘭字風のラベルにデザインしたオリジナル日本茶です。

デザインはもちろん、味もこだわられているとのこと。

中身は、下北沢にある人気の日本茶専門店、

「しもきた茶苑大山」 が全面協力した釜炒り茶です。

日本茶と中国茶のいいとこどりのような、深い味わいでした!

マジ卍。いや、マジ蘭字。

 




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