最後に | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

カリスマ古道具商・坂田和實さんが、

1994年に千葉県長生郡に開館した美術館。

それが、as it isです。

 

いつか訪れようと思い続けて早数年、なかなか足を運べなかったのですが。

今年の9月末をもって、当分の間休館になると知り、

ようやくお尻に火が付き、as it isへと車を走らせました。

 

ナビの案内に従い、運転を続けていると、

周囲の景色が、どんどんと田舎の光景に。。。

そして、as it isがいよいよ近づいてきたときには・・・・・

 

 

 

景色は、完全なる山道となりました。

『ポツンと一軒家』でよく見かける光景です。

 

“本当にこんなところに美術館があるのか・・・??”

 

と、不安な気持ちになりながらも、ナビを信じて運転を続けました。

そして、ようやく案内された場所に到着。

そこにあったのは、こんな建物でした。

 

 

 

小さな建物とは聞いていましたが。

 

へー、本当に小さな建物だなァ。

山小屋風なんだなァ。

入り口は2つあって、オープンな感じだなァ。

 

・・・・・などと、外観を観て、さまざまな感想を抱きましたが。

建物に近づくにつれ、これがただの公衆トイレであることがわかりました。

紛らわしいわ。

てか、カーナビ、どうなっとんねん。

 

そんな公衆トイレから、さらに山道を歩くこと2分ほど。

今度こそ、as it isに辿り着きました。

 

 

 

写真では上手く伝わらないでしょうが。

建物と周囲の自然とのバランスとか。

as it isという館名のフォントとか。

外壁のひび割れ具合とか。

すべての雰囲気が、いい感じです。

実に素敵な佇まいの建物。

先ほどの公衆トイレとは大違いです。

 

そんなas it isで現在開催されているのが、“最後に”という展覧会。

その名の通り、27年間の歴史の最後を飾る展覧会です。

 

 

 

この空間を最後にゆっくり味わえるよう、あえて展示品は最小限に。

メインとなる展示フロアには、

坂田さんの審美眼に適った鰻取りとフィリピンのベンチ、

 

 

 

アフリカのマリで出土した土偶が展示されていました。

 

 

 

屋根裏部屋を思わせる2階の空間も、

これまでは展示スペースとして使われていたそうですが。

今回の展覧会では、ご覧のような感じに。

 

 

 

引っ越し前のような。閉店間際のような。

ぽっかりとした空間を目にして、

なんだか僕の心までぽっかりとしてしまいました。

 

展示スペースは、美術館の奥にもう一つあります。

それが、こちらの和室空間。

 

 

 

こちらも展示品は最小限に。

中央に置かれていたのは、

坂田さんの著書 『ひとりよがりのものさし』、一冊だけ。

坂田さん本人がいないのに、本人がいるように感じられる不思議な展示でした。

 

 

 

・・・・・・展覧会としては、以上です。

 

え?この点数で入館料800円は高くない??

そう思われた方もいらっしゃることでしょう。

しかし、実際に美術館の空間を味わってみると、そんなことは一切思わないはず。

さりげなく、センスが良く、どこを切り取っても画になる。

隅々まで美意識が行き届いたこの空間すべてが、ひとつの大きな美術品といった印象でした。

 

 

 

さらに、嬉しいことに!

入館者にはもれなく、

コーヒーかお茶のおもてなしがあります。

なんて素敵なおもてなし。

館内でも中庭でも好きなところで飲むことができます。

 

田舎のバス停にあったら、絶対に座る気がしないのに(←?)、

as it isにあると無性に魅力的感じるこのレトロな椅子で飲もうかとも悩んだのですが。

 

 

 

天気も良かったので、中庭でコーヒーを飲むことに。

 

 

 

ゆったりとした時間が流れる中で、

自然を味わいながらコーヒーを飲む。

ブレンディのCMの原田知世の気分が味わえました。

 

想像していたよりも、何倍も居心地の良い美術館です。

アクセスが悪いのも、この雰囲気を得るためと考えると納得。

星星

これまで訪れなかったことを心の底から後悔しましたが、

もし一度も訪れなかったら、もっと後悔していたことでしょう。

会期は9月26日迄です。

 




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