特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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本来であれば、昨年開催される予定だった大本命展覧会、

“特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」” が1年越しに無事に開幕しました。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

「鳥獣戯画」 こと 《鳥獣人物戯画》 にスポットを当てた展覧会は、

2014年の京博、2015年のトーハクをはじめ、何度も開催されていますが。

今回の展覧会では、史上初となる甲・乙・丙・丁の4巻すべてが通期で一挙展示されています。

しかも、前後期で場面を変えるなんてことも一切なし!

文字通り、すべての巻のすべての場面が展示されています。

まさに、究極の鳥獣戯画展といえましょう。

星星星

 

 

さてさて、みんな大好きな鳥獣戯画だけに、

これまでの展覧会では、3時間待ち4時間待ちもざら。

そこで今回は、とある秘密兵器が導入されると、

事前に発表され、開幕前からちょっとした話題となっていました。

それは、動く歩道。

動く歩道さえあれば、観客が滞留することはありません。

さらには、係員さんが絶えず、

「立ち止まらずゆっくり進んでください」 と声を張り上げる必要もありません。

なんと画期的な!

 

ところが、コロナのせいで、展覧会は事前予約制となりました。

しかも、密を防ぐために、チケット枚数もかなり限定して販売されています。

ということは、動く歩道の出番はなし・・・・・・・・かと思いきや!

 

 

 

ちゃんと動く歩道が設置されていました!!

 

展覧会場に動く歩道が設置されるのは、トーハクの長い歴史の中で初めて!

当然、僕も動く歩道に乗って鑑賞するのは初めてです。

その率直な感想は、「これはめちゃめちゃアリ!」 でした。

 

もともと絵巻物は、画面の左から右へ、

自身の手でスクロールさせて楽しむものです。

 

 

 

とはいえ、展示された状態では、

そのように鑑賞するのは不可能です。

しかし、動く歩道に乗って鑑賞すると、

自然と絵巻物が左から右へとスクロールしていってくれるのです。

しかも、早くもなく遅くもなく、絶妙な速度設定。

 

 

 

なるほど!

当時の人々には、こういう感じで鳥獣戯画が見えていたのか!

まるでアニメーションを観ているかのようでした。

さらに、動く歩道のおかげで、

他のお客さんが一切気にならず、作品に全集中できます。

まるでラーメンの一蘭のようでした (←?)。

この鳥獣戯画体験をしてしまうと、

もう動く歩道がない生活には戻れないレベル。

いっそのこと、この動く歩道を、

国宝 《鳥獣人物戯画》 の附に指定してもらいたいくらいです。

 

 

なお、動く歩道が設置されているのは、甲巻のみ。

乙・丙・丁の3巻に関しては、自分で歩いて鑑賞するスタイルとなっています。

 

 

 

さまざまな動物が登場する乙巻は、

甲巻と同じくらいに見ごたえがありますが。

 

 

 

人物がメインとなる丙と丁に関しては、

 

 

 

甲と乙ほど引き付けられるものがないので (注:個人の感想です)。

自分のペースで観ることができるのは、むしろありがたかったです。

 

ちなみに。

丁巻のラストのほうは、こんな感じ↓

 

 

 

内容グダグダ。作画もグダグダ。

甲巻とは作者も別ですし、

描かれた時代もだいぶ後なので、

正式には、シリーズものというわけではないのですが。

それにしても、甲巻のクオリティとの格差は否めません。

最初はあんなにスゴかったのに、

シリーズの最後が近づくにつれて、グダグダになる。

テレビアニメ版の 『新世紀エヴァンゲリオン』 を彷彿とさせるものがありました。

 

 

さて、鳥獣戯画が展示されているのは第一会場です。

いきなりメインが登場してしまったので、

第二会場は消化試合みたいになっているのでは?

と、若干不安になってしまいました、

いやいやどうして、第二会場も見ごたえがありました。

 

 

 

こちらには、鳥獣戯画の甲巻から分かれた断簡の数々が展示されています。

 

 

 

いうなれば、ディレクターズカット版。

いや、泣く泣くカットしたというよりは、

どうしてもこの場面が欲しかった人が、

鳥獣戯画から切り取り、装丁したもの。

むしろ名シーン中の名シーンです。

 

また、第二会場では、そんな断簡の数々だけなく、

ホノルル美術館から里帰りした摸本も紹介されていました。

 

 

 

改めて、断簡や摸本を観て実感したのは、

面白い場面、絵になる場面ほど、原本から失われているということ。

叶うことなら、タイムマシンに乗って、

完璧な状態の鳥獣戯画を目にしてみたいものです。

 

 

また、展覧会のラストでは、

鳥獣戯画が伝わる高山寺に関する文化財の数々が紹介されていました。

その中には、高山寺が所蔵するもう一つの国宝絵巻、《華厳宗祖師絵伝》 や、

 

 

 

高山寺の開山堂に安置されている秘仏 《明恵上人坐像》 の姿も。

 

 

 

決して、鳥獣戯画一点張りの展覧会にあらず。

最後の最後まで、見逃せない展覧会でした!

なお、高山寺関連の文化財には、こんなものも。

 

 

 

明恵上人が所持していたとされる、

おそらく日本最古とされるタツノオトシゴの標本だそうです。

唐櫃に入れられ、長年大事に保管されてきたのだそう。

それだけに、なんとも神々しかったです。

 

 

ちなみに。

展覧会も見ごたえたっぷりでしたが、

展覧会オリジナルグッズも、たっぷりと用意されていました。

 

 

 

それらの中には、

すみっコぐらしやミッフィーとのコラボグッズも。

こんなん絶対売れるに決まってますやん。

 

 

 


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