Gallery Suchi 10周年記念展 ―Rising― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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約1年ほどの休廊期間を経て、今年3月7日についに復活したGallery Suchi。

五味文彦さんや塩谷亮さん、三重野慶さんといった、

ホキ美術館でお馴染みの写実画家たちとゆかりの深いギャラリーです。

 

 


そんなGallery Suchiは、今年で開館10周年を迎えました (←おめでとうございます!)。

それを記念して、現在開催されているのが、

“Gallery Suchi 10周年記念展 ―Rising―” という展覧会です。

星星

 

 

 

出展作家は、全部で6名。

まずはオープニング展以来、

Gallery Suchiの看板作家である小尾修さん。

 

 

 

全部で3点の新作が出品されていました。

小品ながらも、小尾さんらしさが光る作品ばかり。

現代の作品なのに、どこか古典的。

かといって、古臭いわけではなく、現代性も感じられる。

そんな作品です。

 

 

1つ目の展示室の中央に展示されていたのは、

もう一人の看板作家である石黒賢一郎さんの新作。

《Injection Deviceの仕様》 です。

 

 

 

ワイシャツ生地の質感。リボンの生地の質感。

髪の毛の質感。そして、背景の質感。

それらにももちろん目を奪われましたが。

それよりも何よりもまず頭をよぎった感想は、

モデルの少女 (=石黒さんの娘さん) が大きくなったなァでした。

あと、石黒さんに似てきたなァでした。

モデル本人には会ったことはないですが。

石黒さんの作品を通じて、何年も見続けているので、

思わず、親戚のおじさんみたいな感想を抱いてしまいました(笑)

 

ちなみに。

タイトルにある 『Injection Device』 とは、

石黒さん考案のオリジナルのSFストーリー。

ざっと内容をまとめると、こんな感じになります。

 

時は、2047年。
世界各地でウィルステロが発生。
そのウィルスに感染し、死を免れたものは異形化してしたという。
ウィルスに感染したものの、
科学者である父が開発したワクチンにより、かろうじて一命を取り留めた少女がいた。
その名は、ユウキ。
彼女は首に装着した “Injection Device” から、定期的にワクチンを注入し続けている。
そして、その副作用として驚異的な力を手に入れた。
さらに、父が開発したナノマシンを全身にまとい、より強靭な力を得たユウキは、

異形化した人々や独裁国家の戦闘兵器から人類を守る戦いに挑む!

数年前に、この設定を本人から教えて頂いた際は、

頭の中の大半を、たくさんの “?” マークが占めましたが。

コロナ禍の今、ウィルスに感染することが他人ごとではなくなってきました。

むしろ、石黒さんはこのような事態を予言していたのかも。

会場には、Injection Deviceのガチャガチャもありましたので、

ウィルスへの感染が心配な方は、お一つ手に入れてみてはいかがでしょう?

(ただし、効果は保障できませんw)

 

 

 

さてさて、もう一つの展示室で紹介されていたのは、

次世代の具象作家として、Gallery Suchiがプッシュする2人の女性作家です。

一人は、自身の手や顔をモチーフに描く益村千鶴さん。

 

 

 

100%写実的に描かれているのかと思いきや、

よく見れば、手の一部が剥落したような独特な表現で描かれています。

人体がモチーフなのに、どこか廃墟感のある不思議な世界観でした。

 

 

そして、もう一人は、枝史織さん。

 

 

 

パッと見は、黒く塗り潰されたキャンバスのようですが、

近づいて観てみると、海景を描いた絵画であることがわかります。

 

 

 

現実の海景ではなく、空想の海景。

小さな1枚の絵に、ギュッと物語が詰まっています。

絵を観ているというよりは、海外のおとぎ話を読んでいるような印象を受けました。

 

 

さてさて、今展には、写実の画家だけではなく、

写実的な彫刻を制作する2人の作家も参加しています。

一人は、前原冬樹さん。

元ボクサーという異色の経歴を持ち、

超絶技巧すぎる彫刻作品で人気急上昇中の彫刻家です。

 

 

 

↑こちらの作品、どこからどう見ても、

陶片にしか見えないでしょうが、なんと木彫なのです。

陶片の上に乗せられているコーヒー豆もまた、木彫です。

木彫とわかった上でマジマジと観ても、木彫とは思えません (汗)

観れば観るほど、だんだん自分の目が信じられなくなってくるという恐ろしい作品です (←?)。

 

さらに恐ろしいのが、こちらの 《一刻 (トタンに上顎骨)》 という作品。

 

 

 

もちろんトタンも動物の骨も木彫です。

それ以上に驚かされるのが、この作品が一木造であるということ。

 

 

 

このトタン (の木彫) の上に、動物の骨 (の木彫) が乗っているわけではなく。

一つの木材を彫り抜いていくことで、この作品が完成しているのです。

骨の下の部分は、どうやって貫通させたのか。

トタンの薄さやトタンの歪みたわみは、どうやって彫ったのか。

もはやアートというよりも、イリュージョンの世界です。

 

 

ちなみに。もう一人の参加者は、須田悦弘さん。

植物を本物そっくりに木彫で制作し、
その作品を意外な場所にひっそりと設置することでお馴染みのアーティストです。

今回もかなりひっそりとした場所に作品がありました。

 

 

 

見落とし厳禁。

踏みつけ厳禁です。





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