上村松園・松篁・淳之三代展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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新型コロナウイルスの影響を受けて、
都内を中心に多くの美術館や博物館が臨時休館となっています。
それに伴い、この 【ここにしかない美術室】 も休室しようかとも考えたのですが。
むしろ、こういう時こそ、エンターテインメントは必要なはず!
あえて通常営業で、毎日楽しくアートの情報を発信していきたいと思います。
・・・・・・・・ネタが続けばいいのですが (笑)



さて、本日は、東京富士美術館を訪れてきました。
お目当ては、本日から開幕した “上村松園・松篁・淳之三代展”




女性として初めて文化勲章を受章した上村松園と、
その息子である上村松篁、さらに、その息子である上村淳之さん、
そんな親子三代の日本画家にスポットを当てた展覧会です。
ちなみに、会場の入り口を入ると、親子三代が仲良く映った写真がお出迎え。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


どこにでもいる普通のおばあちゃん、お父さん、孫に見えます。いい意味で。
絵を描いていない時は、普通の親子だったのでしょうね。いい意味で。


まず展覧会は、上村松園からスタート。
上村三代のにわたる作品を展示、保管する松伯美術館のコレクションを中心に、
初期から晩年まで、明治・大正・昭和にわたる松園の美人画の名品が数多く紹介されていました。




それらの中には、代表作の一つ 《花がたみ》 や、




日本の着物美人を描く松園には珍しい 《楊貴妃》 なども含まれています。




作品そのものが美しいのはもちろんのこと、
こだわり抜かれた表装の美しさも、上村松園の魅力。




どの表装も品があり、絵とマッチしていましたが、
特に印象的だったのが、《ほたる》 という作品の表装。
初夏の一場面を描いた作品に合わせたのでしょう。
珍しい団扇柄となっていました。




また、今回の展覧会では、松園による貴重な下絵や素描も紹介されています。




こういった積み重ねがあって、
あれらの美しい女性像が生まれていたのですね。
そのことを、改めて実感させられました。


さてさて。
想像していた以上に、松園作品が充実していたため、
すっかりお腹いっぱいになってしまいましたが、展覧会はまだまだ終わりではありません。
上村はつづくよどこまでも。
続いては、上村松篁の先品が紹介されています。




上村松園の息子として紹介されるため、
上村松園のバーターと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
決して松園よりも腕が劣っているわけではありません。
むしろ、観察力や創意工夫は、母親を超えているのでは。
その実力で文化勲章を受章し、親子2代で受賞するという偉業を成し遂げています。

ちなみに、今展には、上村松篁の代表作 《万葉の春》 も特別に出展中。




こちらは、万葉集の世界をモチーフに描かれた作品で、
かつて奈良にあった近鉄ビルの壁画として制作されたものです。
その幅は、実に7m。
松篁の作品の中でも屈指の大作です。
松篁本人は、この絵に対して、
「ただ概念的に、既成の人物画の技法を知識として学んだ絵。」と謙遜していたそうですが。
その美しく気品溢れる女性描写は、母親にも引けを取っていませんでした。
松園のDNAは着実に受け継がれていたようです。


さて、展覧会のラストを飾るのは、上村淳之さん。




父の松篁も鳥の絵を多く描いていましたが、
それに輪をかけて、淳之さんは、鳥の絵を多く描いています。
唳禽荘 (れいきんそう) と名付けられたアトリエでは、
実際に鳥を飼っており、その世話をしながら鳥の絵を描いているとのこと。
多い時には、実に263種、約1600羽の鳥を飼っていたのだとか (←もはや鳥類園のレベル!)。
余談ですが、淳之さんは、昭和62年に、
日本で初めてナベヅルの人工孵化に成功しているそうです (←何者?)。

そんな鳥に精通した淳之さんだからこそ描ける鳥の世界。
1羽1羽にちゃんと個性がありました。




上村松園、上村松篁、そして、上村淳之さん。
親子でありながらも、それぞれ個性は違います。
でも、全くの他人かといえば、そうではなく、
親子であるがゆえに、やはりどこか通ずる部分も感じられました。
日本美術界が誇る親子三代。
その魅力をたっぷり堪能できる展覧会でした。
星星

個人的には、松園が描いた松篁、
松篁が描いた淳之さんの絵が観られたのも微笑ましかったです。




ちなみに。
今回の展覧会では、作品だけでなく、作家の言葉も多く紹介されていました。




その中には、松園さんのこんな言葉も。




今まさにコロナウイルスのせいで、
美術界は、雨があり風があり、沈むばかりに船が傾いています。
しかし、これを通り抜ければ、きっと強くなれるはず。
そう信じましょう。

東京富士美術館の休館は、3月2日から。
本日3月1日は、開館しています!




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