田附勝 KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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今年も、『あざみ野フォト・アニュアル』 のシーズンがやってきました。
『あざみ野フォト・アニュアル』 とは、現代の写真表現を紹介するシリーズで、
いうなれば、横浜市民ギャラリーあざみ野での2月の風物詩ともいうべき展覧会です。
記念すべき第10回目となる今年の 『あざみ野フォト・アニュアル』
フィーチャーされているのは、写真家の田附勝さんです。

田附勝さんといえば、デコトラとそのドライバーたちを撮り続けた 『DECOTORA』 や、

DECOTORADECOTORA
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東北で暮らす人や動物、文化を映し、
第37回木村伊兵衛写真賞を受賞した 『東北』 といったシリーズで知られていますが。




“田附勝 KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展” と題した今展では、
2012年より撮影を始めたという新シリーズ 『KAKERA』 が紹介されています。




展示室に入って、まず何よりも驚くのは、
会場が薄暗く、そして、ガランとしていること。




黒い壁が3つほど設置されており、
それぞれに、パネル化された写真が立てかけられています。




こちらが、その 『KAKERA』 シリーズ。





映っているのは、奈良文化財研究所 埋蔵文化センターであったり、
相馬市立博物館であったり、どうやら日本各地の博物館の収蔵庫の光景であるようです。
さらに、展示室を奥に進むと・・・・・




今度は、さらに大きな壁が現れました。
とりあえず、この壁に沿って、薄暗い展示室を進みます。
すると・・・・・




何やら明るいスペースが。
そのスペースから、光が漏れ出ています。
まるで蛾のように、その光に導かれると、
中では、不思議な写真が展示されていました。




縄文土器と新聞。
一見すると、シュルレアリスムのように、
あえて狙った組み合わせに思えるかもしれませんが、そうではありません。
これらの写真は、博物館の収蔵庫や発掘現場で保管されていた縄文土器のかけらを、
中敷きや梱包などとして使用されていた新聞とともに、保管状態そのままに撮影したものです。

例えば、これらの縄文土器のかけらは、
東電の原発トラブル隠しを報じた新聞とともに保存されていました。




また例えば、これらの縄文土器のかけらは、ケネディ大統領暗殺のニュース、
あるいは、山口百恵さんの顔が大きく映し出された新聞とともに保存されていました。




その当時、縄文土器のかけらを保存した人は、
間違いなく、何も意図していなかったことでしょう。
そこにたまたま、その新聞があったから、中敷きや梱包に使ったはず。
ただそれだけのことなのですが、
遙か遠い昔の人々の生活の一部を伝えてくれる縄文土器と、
ちょっと昔の歴史の出来事を伝えてくれる新聞が組み合わさると、
何かそこに意図や必然性のようなものが感じられるから不思議なものです。
もしかしたら、実は、縄文土器の縄目の紋様は、当時の文字であり、
それぞれの土器のかけらは、当時の何らかのニュースを表していたりして。
そんなことを妄想してしまうくらい、
想像力がいろいろとかき立てられる作品でした。
星


そして、想像力がかき立てられたことで、
ようやく頭が回転し、今さらながら、あることに気がつきました。
薄暗いところから明るいところへと至る、
この展示空間は、博物館の収蔵庫をイメージしていたのですね。


ちなみに。
展覧会のラストに展示されていたのは、こんな一枚でした。




どんな新聞記事なのかと思い、近づいてみたところ、
東スポ (東京スポーツ新聞) のエロ記事であることが判明。




なんちゅう記事で土器を保存してんだよ。




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