白髪一雄 展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の “白髪一雄 展” に行ってきました。




近年、NYのグッゲンハイム美術館で特別展が開催され、
世界的に注目を集めている具体美術協会 (通称、GUTAI) の中心メンバーであった白髪一雄。
その東京では初となる大規模な回顧展です。

さてさて、初期の白髪一雄作品には、


白髪一雄 《難航》 1949年 尼崎市蔵


モチーフが具体的にハッキリとわかるように描かれていますが。
彼が具体美術協会に参加する前年の作品からは、


白髪一雄 《無題》 1959年 豊田市美術館蔵


白髪一雄 《天空星急先鋒》 1962年 兵庫県立美術館蔵


具体的なモチーフが完全に消えてしまっています。
「だったら、具体じゃないじゃん!」 と、ツッコみたくなるところですが。
具体美術協会の “具体” とは、そういう意味ではありません。

具体美術協会のリーダーとして、立ち上げから最後まで、
メンバーを引っ張っていったのが、関西の抽象美術の先駆者・吉原治良。
人呼んで、『ミスターグタイ』 です。
そんな吉原を慕って、関西在住の若きアーティストたちが集いはじめました。
そこで、彼はこう宣言するのです。

「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したい!」

こうして、具体美術協会という名前のグループが結成されました。
そして、吉原リーダーは、若手メンバーに対して、

「人の真似をするな!これまでになかったものを作れ!」

と、檄を飛ばします。
それを受けて、ある若手メンバーは、電気で洋服を作りました。
また、ある若手メンバーは、手作りの機械に絵を描かせました。
そう、若手メンバーたちは、吉原の無茶ブリに見事に応え、
それまでの美術の歴史には無かった作品を、次々に生み出していったのです。
白髪一雄も、その一人。
彼もまた、それまでの美術の歴史には無かった画期的な画法を編み出したのです。


白髪一雄 《天慧星拚命三郎(水滸伝豪傑の内)》 1964年 東京国立近代美術館


白髪一雄 《無題》 1967年 豊田市美術館蔵


画像データで観る分には、他の画家が描いた抽象画と、
そこまで大差がないように感じる人も多いことでしょう。




実際の作品にググッと近づいてみたり、
横から下から斜めから、あらゆる角度から観てみてくださいませ。
そうすれば、白髪一雄が編み出した独特の画法がわかるはず。




正解は、「足で描く」。
その名も、フット・ペインティングです。




絵を注意深く見てみれば・・・・・




足の指の跡が確認できますね。
よっぽど、このあたりで踏ん張ったのでしょう。


会場には、そんな白髪のフッド・ペインティングの作品を中心に、
日本各地から集められた初期から晩年までの絵画約60点が一堂に会しています。




足で踏んだうどんに、強烈なコシが生まれるように。
足で踏むマッサージによって、大きな圧がかかるように。
もちろん足で描かれた絵は、手で描かれた絵以上のパワーを宿していました。
こんなにも圧迫感を覚えた展覧会は初めてかもしれません (笑)
星


ちなみに。
数点の作品は、絵画展には珍しく、床に展示されています。




もともと、そう描かれていたので、
当たり前と言えば当たり前なのですが、めちゃめちゃしっくりきました。
もし白髪一雄展の続編があるのなら、
むしろ、すべてを床に置いて欲しいほど。




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