舘鼻則孝「It's always the others who die」 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、ポーラ ミュージアム アネックスで開催されているのは、
“舘鼻則孝「It's always the others who die」” という展覧会です。




花魁の履く下駄から着想を得たヒールレスシューズが、
あのレディー・ガガの目に留まり、ガガ様が愛用したことで、
一躍世界から注目を集めた ”シンデレラボーイ” 舘鼻則孝さん。
あれから約10年に及ぶ芸術活動の、現段階での集大成ともいうべき展覧会です。




出展作は、20点。
オール新作です。
出展されていた2足のヒールレスシューズも、もちろん最新作。
1足は、牛革に紋様がデザインされたヒールレスシューズ、




もう1足は、クリスタルガラスがコーティングされたヒールレスシューズです。




なお、クリスタルの数は、約15000粒 (!)。
それも、職人が精緻な手仕事で1粒1粒全面にあしらっているのだそうです。
また、職人による手仕事といえば、初公開作となる 《Arrows》 という作品も。





鏡に突き刺さった225本の矢。
木組みのブナの木に、ウレタン塗装を施したものです。
これらの矢はすべて、職人が手仕事によって丁寧に仕上げられています。

ちなみに、近年、「生と死」 をテーマに作品を制作している舘鼻さん。
こちらの 《Arrows》 も、やはり 「生と死」 をテーマにした作品です。
なんでも、『古事記』 や 『日本書紀』 に登場する神様、
天若日子 (アメノワカヒコ) の還矢 (かえしや) の物語に着想を得た作品とのこと。
還矢のエピソードをざっくりとまとめると、こんな感じです。

 葦原中国を平定するに当たり、
 天照大御神と高御産巣日神 (タカミムスビ)は、天若日子を派遣しました。
 しかし、天若日子は大国主神の娘と結婚。
 8年経っても、葦原中国を平定せず、高天原に戻ろうともしませんでした。
 そこで天照大御神と高御産巣日神は雉を派遣し、天若日子に戻ってこない理由を尋ねさせます。
 その雉の鳴き声を聞いた天若日子の妻は、「こいつの声、不吉だから殺しといて」 と一言。
 天若日子は、妻に従って、弓矢で雉を殺しました。
 さて、雉を射貫いた矢は、グングン飛んで高天原へ。
 その矢を手にした高御産巣日神は、
 「もし天若日子に悪い心があるなら、この矢に当たれ」 と祈り、矢を投げ返しました。
 すると、その矢が就寝中の天若日子の胸に刺さり、彼は死んでしまったそうな。


そのエピソードを知った上で、《Arrows》 を見ると、思わずゾワッ。




文字通り、心に突き刺さる作品でした。


ちなみに。
会場には、矢以外にも、突き刺さっているものがあります。
それは、稲妻。




これらもやはり日本の伝統の技が光る作品。
それぞれ金箔とプラチナ泊で仕上げられていました。




作品はスタイリッシュで、インパクトもありますが。
伝統の技術がその根底にあるがゆえに、
決して、アバンギャルドで奇を衒った印象はなく、
会場全体は、わびさびが感じられ、まるで枯山水の庭園のような雰囲気さえありました。
星


ちなみに。
ポーラ ミュージアム アネックスの展示スペースとは別に、
ポーラ銀座ビル1階のウィンドウにも、多数のベビーヒールレスシューズが。




舘鼻さんが、“ヒールレスシューズの一発屋” みたいにならないことを願います。




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