人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技- | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、練馬区立美術館で開催されているのは、
“人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技-” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


こちらは、2012年に開催された “人間国宝 大坂弘道展” に次ぐ (?)、
練馬区に在住する人間国宝にスポットを当てた、練馬区立美術館ならではの展覧会です。




今回フィーチャーされているのは、桂盛仁さん。
2008年に、 彫金の分野で重要無形文化財に認定された金工作家です。
ちなみに、お父様の桂盛行も、




そのお父様も、そのまたお父様の桂光春も、金工作家。




まさに華麗なる金工作家の一族です。
ちなみに、ご先祖様は、足利尊氏の側近のお抱え彫金師とのこと。
桂盛仁さんは、その12代目にあたるのだそうです。

そんな桂盛仁さんの師であり、父である桂盛行は、
江戸の流れを汲むその小気味よい作風から、“名人” と呼ばれた昭和の伝説の金工作家。
脳出血で倒れてしまい、作品を発表できなくなってしまったことから、
残念ながら、人間国宝にこそ認定されませんでしたが、その実力は折り紙付き。
浅草生まれの江戸っ子らしい粋な作品を数多く残しています。





桂盛行作品の中で特に一番印象に残ったのは、《鯖 帯留金具》




もちろん着色したわけではなく、金属の地の色を巧く取り入れた作品です。
どこからどうみても、鯖。
それも、ぷっくりと身が詰まった美味しそうな鯖です。
もし、目の前にこの帯留をした方が現れたら、
終始、この鯖の帯留に目が吸い寄せれてしまうことでしょう。
そして、その日の夕食は、間違いなく鯖料理をチョイスすることでしょう。


さてさて、”名人” と呼ばれた父・桂盛行の作風と比べて、
桂盛仁さんの作品には、どこか飄々としたユーモアが漂っています。




例えば、こちらの菓子器。




菓子器なのに、蟻がたかっています。
絶対、みんながギョッとするヤツ!
来客用には不向きです (笑)

また例えば、こちらの帯留。




なんとトカゲをモチーフにした帯留です。
多少、デフォルメされていますが、
そのぬめり感は、絶妙にリアリティがありました。
もし、目の前にこの帯留をした方が現れたら、思わず手で払ってしまうかも。

会場には、他にもたくさんの桂盛仁さん作の帯留めがあります。
個人的にイチオシなのは、《北狐 帯留金具》 です。




帯を布団にして、スヤスヤ眠るキタキツネ。
しかも、寝相がいいのなんのって♪
フサフサの毛並みも魅力的。
反則的な可愛さでした。

可愛いと言えば、香爐の数々も。





これらは、ただ可愛いだけの作品ではありません。
蓋のミミズクや鹿の部分は、
打ち出し (=金属を裏から叩き、立体的に表す技法) で制作されています。
可愛い振りして、実は超絶技巧なのです。


ちなみに、最新作はこちらの 《粟穂 帯留金具》




注目すべきは、粟の粒。
その1粒のサイズは、0.3㎜!
一つ一つ鏨で彫っているのだとか。
あまりに小さいため、肉眼はもちろん、
カメラを限界までズームしても、1粒1粒を判別するのは不可能でした (汗)


桂盛仁さんは、日々進化し続けている―。




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