横山華山 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、東京ステーションギャラリーで開催されているのは、“横山華山” という展覧会。
展覧会のタイトルは、画家の名前のみ。
展覧会のキャッチコピーは、「見ればわかる。」 のただ一言。
かつてこれほどまでに、潔い展覧会があったでしょうか。


今でこそ、ほとんど知られていない横山華山 (1781/4~1837) ですが、
あの夏目漱石の 『坊ちゃん』 にもその名が登場するほど、当時は人気を博していたそうです。
なぜ、そんなに人気があったのか?
その答えは、確かに、実際の作品を見ればわかりました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


普通に巧いですし、普通にセンスが光っています。
これだけの実力の持ち主が、今日まで忘れられていただなんて。
その事実に、ただただ驚かされました。
美術史上の 「うもれびと」 を発掘した東京ステーションギャラリーに感謝。
この秋、見逃せない日本美術展です。
星星


さてさて、明治天皇に下賜されたという 《桃錦雉・蕣花猫図》 のように、




いかにも京都で活躍した絵師らしい雅な作品も、華山は多く残していますが。
実家の横山家が曾我蕭白のパトロンだったため、
家に蕭白があるのが当たり前という普通でない環境で育った華山。
蕭白テイストの奇想の作品も多く残しています。




ちなみに。




写真左にあるのが、華山による 《蝦蟇仙人図》
右にあるのが、その元絵となった蕭白の 《蝦蟇仙人図》 です。
蕭白のスタイルを完全にものにした上で、
さらに、華山は自分なりのアレンジを加えています。
より人体の表現がリアルといいましょうか。
どこか西洋美術っぽい印象を受けました。


日本国内からだけでなく、
ボストン美術館や大英博物館からも作品が里帰りしている史上初にして過去最大規模の横山華山展。
見逃せない作品は山ほどありますが、
中でも必見なのは、華山の集大成ともいわれる 《祇園祭礼図巻》 です。
江戸時代後期の祇園祭の全貌が、上下巻約30メートル (!) に渡って克明に描かれています。
今回の展覧会では、その一部を紹介・・・・・なんて、チマチマしたことは行わず。
特注のケースを用いて、全巻展示しています!





祇園祭を盛り上げる山鉾や神輿が、細部まで精緻に描かれているのはもちろんのこと。
祭に携わる人々の表情や仕草も、一人一人ちゃんと描き分けられているから驚きです。


横山華山 《祇園祭礼図巻》 上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵


上下巻30メートル分を鑑賞し終えたとき、
本当に祇園祭をまるまる堪能したような充足感がありました。
この作品を観るためだけに、展覧会を訪れる価値は大いにあります。

また、華山の最高傑作とされる 《紅花屛風》 も出展されています。


山形県指定有形文化財 横山華山 《紅花屛風》 文政8(1825)年[左隻] 文政6(1823)年[右隻] 山形美術館・(山)長谷川コレクション
(注:展示期間は9/22~10/14)



こちらは、祇園祭の宵山の時期に、山鉾町にある旧家・老舗が、
それぞれの所蔵する美術品・調度品などを飾る、通称 「屏風祭」 のために、
京都の紅花問屋が華山に依頼した作品だそうで、紅を作る工程が描かれています。
よほど紅花問屋が威信をかけたのでしょう。
最良質の紙や顔料、金やラピスラズリなど贅沢な画材がふんだんに使われているそうです。
今から約200年前の作品とは思えない美しさでした。
なお、この作品が展示されているのは、10月14日まで。
行くなら今しかねえ、ですよ。


ちなみに、どの華山の作品も印象的でしたが、
華山の弟子、小澤華嶽が描いた 《蝶々踊図巻》 も印象的でした。




蝶々踊とは、1839年 (天保10年) の春に京都で実際に起きた出来事だそうで。
昼夜を問わず、仮装した人々が踊り狂ったのだそうです。
まさに、渋谷のハロウィン状態。
タコやナマズ、鶴や天狗など、思い思いにコスプレをしています。
しかも、衣装のクオリティが相当高いです。
個人的には、カタツムリのコスプレをしている人がお気に入り。
仮装大賞を彼にあげたいと思います。




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