金魚絵師 深堀隆介展 平成しんちう屋 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、平塚市美術館で開催されているのは、
“金魚絵師 深堀隆介展 平成しんちう屋” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、金魚をテーマに制作を続けて18年、
自他ともに認める 『金魚絵師』 の深堀隆介さん (1978~) の公立美術館では初となる展覧会です。
初期の作品から最新作まで、出展作品は約200点。
卒業制作で発表したという不気味すぎる 《自画像》 など、一部例外はありますが。




基本的にはすべての作品が、金魚がモチーフとなっています。
目にも涼しげ、夏にピッタリな展覧会です!





絵画作品や立体作品など、さまざまなジャンルの金魚作品がありましたが。
深堀隆介さんの代名詞といえば、やはり透明な樹脂を使った作品でしょう。




枡の中を金魚が優雅に泳いでいます。
一見するとフィギュアのような立体作品に思えますが、
実は、これらの金魚はアクリル絵具で描かれたものなのです。
まず、枡の中に透明樹脂を流し込み、固まったら、アクリル絵具で金魚の一部を描きます。
そして、その上にまた透明樹脂を流し込み、
さらにアクリル絵具で金魚の一部を描きます・・・の繰り返し。
そのように描いたものがレイヤーになることで、影が下の層に落ち、
まるで本当に泳いでいるかのような立体的な金魚作品が誕生するのだそうです。


・・・・・と、理屈はなんとなく理解できるのですが。
それを踏まえて改めて鑑賞したところで、
結局のところ、立体の金魚が泳いでいるようにしか思えません。
まさに深堀マジックです。




さてさて、深堀さんが描いた金魚が泳ぎ回っているのは、枡の中だけではありません。
展覧会では、「えっ、こんなところにも金魚?」 と驚く作品が多数出展されていました。





例えば、和傘やタイルの中。





また例えば、ブリキ缶やノスタルジックなお弁当箱の中。




さらに例えば、アンティークな文机の中、




ガレやドーム兄弟といった巨匠のガラス作品の中にも、金魚が泳いでいます。




アート作品として見れば、もちろん美しいのですが。
もしこれが現実世界での光景だったらと思うと、軽くゾッとしました (笑)。

また、金魚が泳ぎ回る作品には、このようなものも。




これらは、2011年の東日本大震災の被災者から提供を受けた、
津波で亡くなった子どもの上履きやバケツに鎮魂の思いを込めて、深堀さんが金魚を描いた作品です。
東日本大震災で犠牲になった方々の尊い命と、
金魚の儚いイメージが共鳴して、胸にグッと迫るものがありました。

正直にカミングアウトすると、深堀さんの作品をただ美しい、
ただエンターテイメントに徹した作品と思っていた感は、若干ありますが。
今回の展覧会を通じて、そういうイメージが払しょくされました!
星星


ちなみに、展覧会の目玉と言えるのが、新作のインスタレーション。
《平成しんちう屋》 です。
しんちう屋 (=真鍮屋) とは、江戸時代に、
東京・上野の不忍池近くに店を構えたとされる日本最古とされる金魚屋。
深堀さんは、“もしも、その現代版があったら?” をイメージして、
大掛かりなインスタレーション作品 《平成しんちう屋》 を発表しています。





冷静に考えれば、一匹も本物の金魚がいるわけないのに。
この空間に何十匹、何百匹もの金魚がいるような感覚に陥りました。
金魚の儚い生命が感じられる空間です。





このインスタレーション作品を観るためだけでも、平塚市を訪れる価値は大いにアリ!
金魚の夏、平塚の夏。




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