花鳥礼讃 ―渡邊省亭・水巴 父と子、絵画と俳句の共演― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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江戸時代に世田谷代田村の名主をつとめ、
明治以降は茶業の発展に貢献した齋田家に残る資料を公開する資料館。
それが、齋田記念館です。




公式HP上では、東環状七号線 (通称:環七) 沿いに、“ひっそりと佇んでいます” とありますが。
それは、あくまで自称!
明らかに周囲とは違う立派な門構えなので、きっちりと目立っています。

斎田記念館


ちなみに、Googleマップで、齋田記念館および、
一般公開されていない齋田家住宅の敷地を確認してみると、ご覧の通り↓




全然ひっそりとしてないです (笑)


さてさて、そんな齋田記念館は、今年でめでたく開館20周年を迎えました。




それを記念して、現在開催されているのが、
“花鳥礼讃 ―渡邊省亭・水巴 父と子、絵画と俳句の共演―” という展覧会。




去年、加島美術で初の回顧展が開催されて以来、
日本美術ファンの間でジワジワと人気急上昇中の日本画家・渡邊省亭にスポットを当てた展覧会です。
(「渡邊省亭ってどんな人?」 という方は、こちらの記事をチェック→“SEITEI~渡辺省亭 蘇る!孤高の神絵師”

実は、まとまった数の渡邊省亭の作品を所蔵していたという齋田記念館。
開館20周年であり、さらには、渡邊省亭の没後100年でもある今年2018年に、
秘蔵の省亭コレクションを、前後期あわせて一挙公開することにしたのだそうです。
昨年、渡邊省亭にハマった皆さま、まだ見ぬ省亭がここにありますよ。
また、渡邊省亭の作品をただ並べるだけでなく、
省亭の息子で俳人の渡邊水巴の俳句と併せて紹介しているのも、今展覧会ならではのポイントです。

例えば、《秋の夕ぐれ》 という作品。


渡邊省亭 《秋の夕ぐれ》 双幅 大正時代 齋田記念館蔵


左幅には、蚊遣香が描かれています。
その上空を蚊が2匹飛んでいます。
この絵と併せて紹介されていたのは、「一筋の秋風となりし蚊遣香」 という一句でした。

また例えば、ラフに描かれた秋草がモダンな印象の 《月の秋草》 という作品。


渡邊省亭 《月の秋草》 大正時代 齋田記念館蔵


この絵には、「うしろから秋風來たり草の中」 という一句が添えられていました。
これらの句が、絵に合わせて詠まれたものなのかどうか、実際のところは不明とのことですが。
父と子。絵画と俳句。
世代も表現のジャンルも違えど、世界観がちゃんと響き合っていました。

省亭の絵を鑑賞しながら、水巴の句を口にしてみたくなる。
声に出して読みたい日本美術展です。
星


ちなみに、出展数はそれほど多くないですが、どの作品も見ごたえがあります。
さすが、神絵師・渡邊省亭です。
全て紹介したいくらいですが、
それだと確実に記事が長くなってしまうので、数点に絞ってご紹介いたしましょう。
まずは、《青楓白鷺図》 から。


渡邊省亭 《青楓白鷺図》 明治~大正時代 齋田記念館蔵


白鷺が巧いのは、もはや当然のこととして。
その手前の葦の表現が、実にスタイリッシュ。
パッと見、緑のレーザービームかと思いました。
それに白鷺が触れると、警報が鳴り響いてしまうかも。
緊張感の漂う一枚です。


続いては、《秋草花・雪中菊に雀図》


渡邊省亭 《秋草花・雪中菊に雀図》 双幅 明治28年(1895) 齋田記念館蔵


右幅には、描かれているのは女郎花。
手前の女郎花は着彩されていますが、後ろの女郎花はモノクロで描かれています。
何、そのセンス!
しかも、女郎花の一部をよーく見てみると・・・




カタツムリが描かれていました。
何、そのセンス!(2回目)
雰囲気的に、どことなくアールヌーヴォーっぽい印象も。
若き日にフランス留学を経験している渡邊省亭。
もしかしたら、そのときのエッセンスを取り入れた作品なのかもしれません。


花鳥画を得意とした省亭ですが、動物を描いた作品も残しています。


渡邊省亭 《猛͡乕之図》 大正3年(1914) 齋田記念館蔵


こちらは、大正3年、寅年の初めに描かれた作品なのだそうです。
大きながたいをしていますが、目は優し気。
全体的にモフモフしていて、チャーミングな印象です。
ちなみに、こちらの作品は、この展覧会に合わせて収蔵されたばかりとのこと。
今回お披露目されたばかりの貴重な省亭作品です。


最後にご紹介したいのは、息子の水巴による 《西瓜》 という俳画軸。

 
渡邊水巴 俳画軸 《西瓜》 明治~昭和時代 齋田記念館蔵


絵の才能は、間違いなく省亭譲り。
しかも、よく見ると、コオロギはお尻を向けて描かれていました。
その洒脱なセンスも、間違いなく省亭譲り。




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