猪熊弦一郎展 猫たち | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されているのは、“猪熊弦一郎展 猫たち” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


「猪なの?熊なの?猫なの??」

と困惑された方も、いらっしゃるでしょうが (←?)。
こちらは、昭和期に活躍した洋画家・猪熊弦一郎が描いた猫の絵の数々を紹介する展覧会です。
もし、猪熊弦一郎 (1902~1993) の名前にピンと来なくとも、
彼がデザインした三越の包装紙や紙バッグは、きっと一度は目にしていることでしょう。

三越 包装紙


そんな猪熊さんは、大の猫好き。
一度に1ダースの猫を飼っていたそうです (←猫をダースで換算する人に初めて出会いました!)。
また、これまでに色々描かれてきた猫の絵が、どうにも気に入らなかったようで、

「猫の形と色を今までの人のやらないやり方で描いてみたいと思つた。」 (報知新聞1944年10月4日)

とのこと。
その約90年の生涯で、たくさんの猫の絵を描きました。

今回の展覧会では、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の所蔵品を中心に、約160点の猫の絵が会場を占拠。
まさに猫の集会状態です。
初期の作品や、




フランスでマティスに師事し、その影響を受けた頃の作品は、まだ猫の原型を留めていましたが。



猪熊弦一郎 《猫と食卓》 1952年 油彩・カンヴァス 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation ※無断転載禁止


画業が進むにつれ、猪熊弦一郎の作品はデフォルメ化が進んでいきます。
デフォルメまっしぐら。
当然のように、猫もデフォルメ化されていきます。





ただ、どれだけデフォルメされても、
猫らしさがちゃんと残っている、猫の魅力がちゃんと伝わってくるのが猪熊作品のスゴイところ。


猪熊弦一郎 題名不明 1950年代 版画・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation ※無断転載禁止


どの猫も、ちゃんとカワイイのです♪
そして、どの猫も今にも動き出しそう。
人生で初めて、猫じゃらし片手に展覧会に行きたいと思ったほどです。

個人的に一番メロメロになったのは、
サラサラッとスケッチで描かれたこちらの猫。


猪熊弦一郎 題名不明 1986年 鉛筆・紙 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©The MIMOCA Foundation


世の中に、ゆるキャラは数多く存在していますが、
こちらのゆるっゆるな猫は、その究極なのではなかろうか。
一応、猪熊弦一郎の名誉のために、初期や中期の丁寧に猫を描いたデッサンも紹介しておきます。





↑やれば、できる人なのです。


ちなみに、どの猫の絵も印象的でしたが、
もっとも印象に残っているのは、頭に猫を乗せている人の絵。




「いや、そんな風には猫は乗んないだろ!」 とツッコまずにはいられません。
頭、広すぎ。
そんな奇妙な人物が3人。
吉田戦車のマンガに出てくるような顔が、無表情でこっちを見つめています。
実にシュールな光景でした。


それと、無表情と言えば、こちらの女性たちも↓




左の女性を見た時に、“誰かに似ているんだよなぁ・・・” と思ったのですが。
展覧会場では、答えが出ず。
今こうして記事を書いている時に、ようやく喉に刺さった小骨が取れました。
なんとなくですが、風間杜夫に似てますね。




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