あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~ | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、静嘉堂文庫美術館では、
“あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~” が開催されています。

あこがれ


こちらは、泉屋博古館分館との初となる連携企画展で、
泉屋博古館分館で開催中の “典雅と奇想―明末清初の中国名画展” と同じく、
明清絵画・・・すなわち、明時代と清時代の中国絵画がテーマとなっています。

泉屋博古館分館の展覧会では、
明時代の末期から清時代の初期にかけての中国絵画に焦点が当てられていましたが。
静嘉堂文庫美術館の展覧会では、そこに限定せず、
明清時代 (1368~1912) の名画の数々が幅広く紹介されています。

明清
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


さらに、何よりも特徴的なのは、
“日本人が、いかに明清絵画に憧れを抱いていたか” に焦点が当てられていたこと。

例えば、こちらの2点の絵画。

谷7 谷
左)重要文化財 藍瑛 《秋景山水図》 明時代・崇禎11年(1638) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】
右)重要文化財 谷文晁 《藍瑛筆 秋景山水図模本》 江戸時代・18~19世紀 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】



左は、明時代後期を代表する職業画家で山水画を得意とした藍瑛 (らんえい) による一枚。
そして、右は、江戸時代に活躍した谷文晁が描いた一枚です。
もちろん、たまたまそっくりに仕上がってしまったわけではありません。
谷文晁が藍瑛の山水画を実際に目にして、丁寧に丹念に模写したものです。
単なる形だけの完コピではなく、ちゃんと空気感まで再現しています。
谷文晁がいかに中国絵画に憧れていたかがひしひしと伝わってきました。

また、当時の人々の中国の憧れぶりを伝えるこんなパターンも。

作品


右から2番目の張瑞図 (ちょうずいと)《秋景山水図》 の下にご注目。
何やら筆で文章がさらさらと書かれています。
こちらは、江戸時代中期の文人画家・柳沢淇園による跋文 (ばつぶん)
跋文とは、感想を述べた文のこと。
今風に言うならば、レビューです。
張瑞図の 《秋景山水図》 を実際に目にして、
「超スゴかった!」 的なことが、格調高い文章で表現されていました。
たぶん、☆5つ。


あまり馴染みのない中国絵画。
いきなり、「これって名品なんですよ!」 と紹介されるよりも。
今回の展覧会のように、

「谷文晁や応挙といった日本を代表する絵師たちも憧れていた名品なんですよ!」

と紹介されたほうが、スッと入りやすかったですし、より興味が持てました。
中国絵画を食わず嫌いしている方にもオススメの展覧会です。
星


ちなみに、今回の出展作品の中で特にお気に入りなのは、
若冲にも影響を与えた沈南蘋 (しんなんぴん) による 《老圃秋容図》 という作品。

猫
沈南蘋 《老圃秋容図》 清時代・雍正9年(1731) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


猫の目線の先にいるのは、カミキリムシ。
今にも飛びかかる気満々です。
肉眼では見えにくいですが、単眼鏡で観ると猫の毛が白色で1本1本描かれているのがわかります。
毛並みモフモフ。
思わずお腹のあたりを撫でたくなること請け合いです。
と、ついつい猫にばかり目がいってしまいますが、
画面の上のほうに咲いているトロロアオイの表現も見事。
確かに、憧れるべき名画でした。


それから、李士達 (りしたつ)《秋景山水図》 も秀逸な一枚。

李士達
重要文化財 李士達 《秋景山水図》 明時代・万暦46年(1618) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


画面手前の岩肌のゴツゴツ感。
奥に聳え立つ崖の圧迫感。
そして、画面全体を覆う靄のウェット感。
それらが混然と一体になって、単なる山水画なのに、なんともドラマチックな印象に。
映画のワンシーンのよう。
しかも、大作映画のオープニング。
中国語のナレーションが聞こえてくるようでした。


最後に、㊙お得情報を。
静嘉堂文庫美術館といえば、駅からやや遠いのが難点。
最寄りのバス停からも少し距離があり、しかも上り坂が続きます。
足腰に不安がある方は、タクシーを利用するのがベターでしょう。
もしタクシーを利用したら、必ず領収書をお受け取りくださいませ。
なんと、その領収書と引き換えに、入館料からタクシー代が200円キャッシュバックされるそうです!
(※ただし、招待券、ぐるっとパスは対象外)

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