鏨の華 ―光村コレクションの刀装具― | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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この秋、根津美術館で開催されているのは、
高嶺の花・・・ではなく、“鏨の華” (たがねのはな) という展覧会。

たがね
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


で作られたやかな刀装具をテーマにした展覧会です。
根津美術館に伝わる約1200件の 「光村コレクション」 から選りすぐりの名品が紹介されています。

会場
会場


そんな光村コレクションなる刀装具の一大コレクションを築いたのが、こちらの人物。

光村


美術展の図録の出版などでお馴染みの光村印刷の創業者・光村利藻です。
なんでも長男の初節句がきっかけで、
刀剣や甲冑に興味を抱くようになり、次第に刀装具へとその関心が移っていったのだそうです。
名品をコレクションするに飽き足らず、
刀装具の美しさを自社が得意とする写真印刷で伝えようと、大型名品図録を制作。
この本は、刀装具研究の礎として名著と評されているのだとか。

鏨廼花


ちなみに、その書名こそが、
今回の展覧会のタイトルになっている 『鏨廼花』(たがねのはな) なのです。

刀装具の展覧会というと、男性向けのイメージがあるかもしれませんが。
花 (華) に例えられるだけあって・・・

刀装具

贅と技巧の限りが尽くされた刀装具は、まるでアクセサリーのよう。
表面に無数に打ち込まれた魚子地 (ななこじ) に、
スポットライトが反射して、キラキラと輝きを放っていましたキラキラ

反射


女性も十分に楽しめる展覧会です。
星

余談ですが、魚子とは魚卵のこと。
確かに、とびっこやシシャモの卵に似てはいますが、
綺麗かつ超絶的な技法だけに、これを魚卵に例えた先人のセンスを疑ってしまいます。


ちなみに、今回出展されていた刀装具の中で最も華麗で、
しかも、造形も素晴らしかったのが、重要文化財にも指定されている 《聖衆来迎図大小揃金具》
幕末から明治にかけて活躍した伝説の刀装金工職人・後藤一乗の代表作です。

後藤一乗
後藤一乗 《聖衆来迎図大小揃金具》 彫金・緋銅地 日本・江戸時代 19世紀 個人蔵


鍔には来迎する菩薩が7体。
目貫も菩薩となっています。
なんとも有難い、思わず手を合わせたくなる刀装具。
ただ、この刀で斬られる身になって考えてみると、皮肉がすぎる気がします。
「あの世からお迎えが来ているゼ」 的な?


また、刀装具は美しさ、技巧の素晴らしさだけに非ず。
まるでガチャガチャのような(?) 造形としてユニークな刀装具も多く存在しています。
《御伽噺図揃金具(鐔・小柄・目貫・縁頭・栗形・瓦金(裏瓦)・探金・鐺)》 や、

御伽噺図揃金具


《茂林寺釜図透鐔》 なんかも可愛かったですが、
(冷静に考えると、刀を飾る部品がカワイイってのはどうかとも思いますがw)

茂林寺釜図透鐔


個人的に一番気に入ったのは、《睡布袋図二所物(小柄・目貫)》 です。

睡布袋図二所物(小柄・目貫)


布の袋を担ぐのではなく、
布の袋に包まれた、ちょっと珍しい布袋様。
なんともシュールな造形ですが、不思議な可愛さがありました。


さて、刀装具にスポットが当てられた展覧会ではありますが、
せっかくならば刀装具だけでなく、日本刀そのものみたいという方は少なくないはず。
ご安心ください。
展覧会では、日本刀や拵 (鞘や柄など刀装全体) も展示されています。

こしらえ
日本刀


最後に、思わずツッコミたくなった刀装具をご紹介いたしましょう。

砲箭図目貫


その名も、《砲箭図目貫》
銃をモチーフにした目貫です。
刀の一部に銃を装着。
一体、どういうセンスをしているのか。
武器に武器。
発想が完全に小学生です。




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