月岡芳年 月百姿 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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先月の “月岡芳年 妖怪百物語” に引き続いて、
今月も太田記念美術館では、最後の浮世絵師と称される月岡芳年がフィーチャーされています。
今月紹介されているのは、芳年の最晩年の傑作である 《月百姿》
日本と中国の物語や歴史の中の 『月』 にまつわる場面を題材とした全100点からなるシリーズです。

夕顔
《月百姿 源氏夕顔巻》


孫語句
《月百姿 玉兎孫悟空 》


今月の “月岡芳年 月百姿” では、その100点すべてが一挙大公開!
一部が紹介される展覧会は、ままありますが。
完全コンプリートした状態で観られる展覧会は、かなりレアです。
この機会を逃してしまったら、運のツキ。
浮世絵ファンならずとも、押さえておきたい美術展です。
星星


さてさて、今回、《月百姿》 全100点を観たわけですが、
まず何よりも驚かされたのは、100点もシリーズ展開しているのに、全くマンネリ化していないこと。

“次はどんな作品が来るのかな♪”

と常にワクワク、常に新鮮な気持ちでいられました。
歌川広重の 《名所江戸百景》 も素晴らしい作品ではありますが。
主題や構図が似たようなものも少なくないので、
さすがに半分観たくらいでマンネリに感じてしまいます。
それに比べると、《月百姿》 は、全く見飽きることはなく。
むしろ、あと100点観たいくらいでした。
「続・月百姿」 「帰ってきた月百姿」 「月百姿Z」 があれば、いいのに。


基本的にどの作品もカッコよく、気品があり、
それでいて、デザインセンスは現代風でハッとさせられたのですが。
一番のお気に入りは、こちら↓

月百姿


《月百姿 はかなしや波の下にも入ぬへしつきの都の人や見るとて 有子》 です。
描かれているのは、報われぬ恋を嘆き、
今まさに大切な琵琶とともに入水しようとする厳島の巫女有子。
悲しいシーンではあるのですが、
水面に映る月の光のあまりの美しさに思わず引きこまれてしまいました。
・・・・・有子そっちのけで。


それから、《月百姿 ほとゝきすなをも雲ゐに上くる哉 頼政とりあへす 弓張月のいるにまかせて もお気に入り。

ほとゝきす


鵺退治で知られる源頼政を描いた一枚です。
あえて鵺は描かず、鵺の視点から、
クレーンカメラからの視点で描いているのが、実に斬新。
まるで映画のワンシーンのようです。


また、《月百姿 つきの発明 宝蔵院》 もワンシーンの切り取り方に唸らされる1枚。

つきの発明 宝蔵院


描かれているのは、槍の伝説的名手であり、宝蔵院流の創始者である宝蔵院胤栄。
そんな彼の代名詞ともいえるのが、十文字槍です。
槍を十文字にするという発明を思いついたまさにその瞬間が、このワンシーン。
水面に写る月に、ちょうど槍の影が重なって・・・

「!?」

となったようです。
この日が三日月でなかったら、きっと宝蔵院流は生まれてなかったことでしょう。


最後にご紹介したいのは、《月百姿 月夜釜 小鮒の源吾 嶋矢伴蔵》

月百姿 月夜釜 小鮒の源吾 嶋矢伴蔵


描かれている2人の人物は、石川五右衛門の手下コンビです。
大釜を盗もうとしたところ、
実は釜の中で持ち主が寝ていて、その音にビックリしているシーンなのだとか。
確かに、これ以上ないくらいに、下っ端感が溢れています。
タッチも他の絵とは違って、漫画チック。
『ONE PIECE』 のチョイ役にいそうな感じ。




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