帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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去年までは、僕の中では、ほぼノーマークの美術館ながら、

2010年に入って、 “伊藤若冲 ―アナザーワールド―”“田中一村 新たなる全貌” と、

立て続けにヒット美術展を飛ばしてきた千葉市美術館。

そして、今回もまた。

1年の間に、3回もヒット美術展を開催できるなんて、

新生・千葉市美術館の企画力は、本物と言わざるを得ません。

てか、どうして、僕が大学時代にもっと頑張らなかったんだ (笑) ?!

(大学の最寄りの美術館だったので)



さて、その3度目の奇跡となる美術展は、

“帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展”


アメリカ・ニューオリンズに住むギッター博士は、

日本を滞在した際に、日本美術に目覚め、江戸絵画をコレクションし始めました。

禅画を中心に、文人画、円山四条派、琳派、浮世絵、奇想の画家…と、

幅を広げた江戸絵画の一大コレクションは、今や有数の日本美術コレクションとして認知されるほどに。

そんな日本から遠く離れたアメリカで集められた江戸絵画コレクションが、

あの2005年のカトリーナの被害をも乗り越えて、ようやく日本にまとまって帰ってきたのです。

お帰りなさい!

これは、日本人として、丁重にお出迎えに行くべき…と言っても過言ではありません。


星星星

「江戸絵画展の決定版!」 とも言うべき内容。

バラエティ豊かで、最初から最後まで飽きません。

3ツ星です。



とにもかくにも、今回の美術展は、見どころ溢れる作品がいっぱい。

そこで、本日の記事は、いつもより余計に作品を紹介して参ります。


まずは、いつぞやの森美術館での展示以来の再会となる作品から。

中原南天坊の 《托鉢僧行列図》 です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-托鉢僧行列図  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-托鉢僧行列図



「なんだ、おまいらw」


このよくわからない、でも可愛い、キャラクターは托鉢僧。

右幅では托鉢に向かうところ、左幅では帰るところが描かれているとのこと。

こんな集団で、こんなよくわからんのが来たら、間違いなく追い返します (笑)



続いて、 「文字書き過ぎだって!」 と突っこまざるを得ない一枚。

池大雅の 《太秦祭図》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-太秦祭図



書かれているのは、祭の由来とのこと。

おそらく推察するに・・・

前半、考えなしにゆったりとしたスペースで文字を書き始めたものだから、

途中から行間をキツキツにせざるを得なかったのでしょう (笑)

こういうペース配分出来ない人って、いますよね。


文字がいっぱいと言えば、白隠慧鶴のこんな作品も…


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-篆書百寿



真ん中にドーンと書かれているのは、まだ 『壽』 という漢字だと認識できますが。

実は、その周りに描かれているのも、すべて 『壽』 という漢字!

様々な篆書体で書した百の 『壽』 を並べた 《篆書百寿》 という作品です。

一番下の左から2番目なんて、

鳥みたいなのがピヨピヨ飛んでるだけで、どう見ても 『壽』 じゃないです (笑)

下から4段目、左から5番目のなんて、もはやダイヤモンド形になってますし。



加えて、もう一発、漢字読めない系作品 (←?)

幕末の剣豪であり幕臣であった山岡鉄斎の書です。

さて、何と書かれているのでしょうか?


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-龍図



難易度は、かなり高し。

東大生2%の正解率くらいではないでしょうか。


正解は・・・・・『龍』

『龍』 の一字を、一筆で書いたものだそうです。

日本人を長いことやっていますが、読める気がしませんでした (笑)



今回の美術展の6つのセクションのうち、

一番の見どころは、やはり 「若冲と奇想の画家たち」

若冲の絵は、実に8点も展示されています。

ゆるめな墨絵の作品が多数です。

これだけでも若冲ファンにはたまりません。


例えば、 《寒山拾得図》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《寒山拾得図》



江戸絵画では、よく見かけるモチーフですが、

若冲が描くと、ここまでゆる~くなるものなのですね。

観ているだけで、心が “ほわわ~ん” となります。


この同じ寒山拾得図を、曽我蕭白が描くと、こんな感じに。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-寒山拾得図



「し、渋すぎる… (笑) 」


男は黙って背中で語る。

もはやBLの雰囲気まで漂っています。



これと同様に、

“同じモチーフが、若冲と他の画家では全然違うぞ” シリーズ第2弾。

若冲が描く達磨は、こんな感じ。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-達磨図



目玉が飛び出すぎて、変です (笑)

さすが、若冲。一筋縄でいきません。


で、同じ達磨図を、円山応挙が描くと・・・


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-達磨図



「どこのイケメンですか (笑) ?!」


もはやハリウッドスターのような貫禄に溢れています。




そろそろ、最後の一枚を。

ここまで性格柄、オモシロ作品を中心に紹介してきましたが、

最後くらいは、純粋に絵として気に入った作品を。

神坂雪佳や源琦、山本梅逸などの作品も素晴らしかったのですが、

一番は何と言っても、酒井抱一の 《朝陽に四季草花図》 です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《朝陽に四季草花図》   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《朝陽に四季草花図》   アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《朝陽に四季草花図》



色合いや図案もさることながら、

この3幅の掛け軸のバランスや構図のデザインセンスが秀逸。

中心の朝陽に吸い込まれるように、しばらく見惚れてしまいました。



いやぁ、江戸の絵画って、本当にいいものですね。





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