鉄を叩く―多和圭三展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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目黒区美術館で開催中の “鉄を叩く―多和圭三展” に行ってきました。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-http://mmat.jp/exhibition/archives/ex011113


「これぞ、目黒区美術館!」 というマニアックで地味目な美術展。
昨今の “瀬戸内国際芸術祭2010” やら “ゴッホ展” やら華々しい美術展とは真逆も真逆の美術展。
中途半端にマニアックで地味な美術展は、単につまらないだけですが、
この美術展のレベルまで行き着くと、もはや清々しく崇高さすら感じます。
星
ある意味で、今年の芸術の秋必見の美術展と言えましょう。


さてさて、この美術展が初の回顧展となる多和圭三さんは、
世にも珍しい、鉄を 「叩く」 アーティスト。
それもただ叩くだけではありません。
何トンもある鉄の塊を、ひたすら叩き続けるのです。
こんな感じで↓




多和さんは、1952年生まれ。
還暦間近ということ感じさせないこのパワフルさ。
アートはさておき、この体力は見習いたいものです。

ちなみに、この上の映像は、美術館内でループ再生されています。
おかげで、鉄をハンマーで叩いた時の 「キンッ!」 というこの音が、常に会場に鳴り響いています。
ちょっと心地よいです。



・・・・・と、そろそろ皆様が気になっていることにお答えいたしましょう。

「で、鉄をひたすら叩くから、どうなるの??」

鉄をひたすら叩くと、どうなるか?
その答えは、こちらの作品で説明いたしましょう。

《無題》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-無題


鉄の塊を何万回と叩くと、わずかなゆるみが生じ、
鉄の縁に、ひさしのようにはみ出す部分が誕生しています。

・・・・・・・・・・・・。

それ以上でもそれ以下でも無く、ここがアートです。


また、 《原器-正六面体》 は、
多和さんが理想とする正六面体の6面すべてを磨いて叩いた作品。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-原器-正六面体


・・・・・・・・・・・・・。

作品の意図は、よくわかりませんが、
「???」 となるのではなく、 「・・・。」 となります。


「語りえぬものについては、沈黙しなければならない  ―ウィトゲンシュタイン」

哲学的なような、禅の教えような。
とにもかくにも、作品と向き合うと、心を無にすることが出来ます。
心の毒素をデトックスしたい方にはオススメかもしれません。



最後に。
図録を見ようと思ったら、そのお値段にビックリ!
何と税込36000円!!
ゼロが一つ間違えて付いているのかと思いました。

なぜ、こんなに高いのかと言うと、
この図録には、全112の鉄のピースからなる多和さんの作品 《弛緩》 の1ピースがもれなく付いてくるから。
作品付きならば、36000円はお買い得かも。
ただし、注意事項が一つ。
この先、また多和圭三展が行われ、《弛緩》 を展示することになったら、
その間、図録に付いてきた1ピースを一旦返さねばならないのだそうです。
ちょっと面倒くさいですね (笑)




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