マジシャンにとって永遠のテーマである。
か、どうかは知らん。
アマチュア、つまり好きでやってる人間なら問題にならないだろう。
持ち歩きたきゃ持ち歩けばいいし、そうじゃなきゃ持たなきゃいい。
問題はプロのパフォーマーの場合。
昔先輩マジシャンに言われたのは、いつ何時やる機会が訪れてそれが仕事につながるのかわからんのだから、常に道具は持ち歩きいつでも出来るように準備しておけ、ということ。
一理どころか百理くらいあるお言葉。
実際に真夏でもいつも3ピースのスーツを着て常住座臥臨戦態勢をとっているマジシャンもいるくらいだ。
さすがにスーツはどうかと思わないでもないが、少なくともその心意気はプロフェッショナルの鏡!
ちなみにマジシャンにとってトランプというのは非常に便利な道具でありまして、一枚一枚の違いがはっきりしていて、どこの家庭でも(少なくともコンピューターゲームが普及する以前は)あるもので、しかもコンパクトに持ち運べる。
扱いに慣れればこれほど使い勝手の良いものはなく、マジックの大半がカードマジックとなるのもむべなるかな。
そんな便利なものだったら持ち歩けよ! と言われそうだが、そこは美意識の問題。
トランプなんか持ってたら「いつでも出来るように持ってました!」と言っているようで気恥ずかしい気がするのだ。
それはプロフェッショナリズムとしては美しいのかもしれないが、なにか野暮に感じてしまうのだ。
常在戦場であった戦国武士と、野暮を嫌い洒落を好む太平の武士の違いのようなものか。
だから僕はトランプに比べてどれだけインパクトに欠けていても、その場で手に入るものでマジックをやるようにしている。
マジックに対する愛情が少ないのかもしれない。
あるいはプロフェッショナルの意識が足りないのかもしれない。
だが僕は「プロのマジシャン」と「プロの俺」のどっちかを取れ、と言われれば、迷わず後者を取る。
要は美意識の置き所だ。