(2)震災体験談 1日目 1月17日(火) その2
揺れがおさまった直後から、私のいる部屋の下の方から、壁土を掘る音が ずっと聞こえていたのですが、声をかけてみると、返事が返ってきました。
その声の主は、となりの1階に住んでいる Tさん という男性でした。
ベッドと壁のすきまにできた小さな空間にいるが、動きがとれないとのことでした。
真っ暗の時は、声の方向がよくわからなかったのですが、その人は、2階のわたしの部屋の 階段の踊り場の下あたりにいたようなのです。
ようやく東の台所の窓から、朝日が差し込んで、明るくなると、2Kの部屋の中の様子がわかってきました。
スピーカーは、私のすぐそばに ころがっていました。
オーディオセットが、コードをピンと張って、目の前まで迫ってきていましたし、台所では、電子レンジが、レンジ台ごと ひっくり返っていました。
テレビや食器棚は、倒れずに、盛り上がった畳の上に のっかって、天井を突いていました。
たまたまコタツに寝ていた私と、正面に向き合う形に位置していた 本棚は、なぜか回れ右をして、私と 直角の方向に倒れていました。
それも、食器棚から落ちて割れた食器類の上に、覆いかぶさるようにして、倒れていました。
おかげで、台所の窓から 脱出するとき、靴を失って、とっさに近くの引き出しから出した、足袋をはいただけのわたしは、割れた食器で けがをすることもなく、無傷で 外に出ることができたのでした。
また、ふだんは、もう一つの タンスのある部屋に寝ていたのですが、そちらの部屋を見て びっくりしました。
整理ダンスの上に、和ダンスが重ねてあったのですが、それが ずれて、ドンと下へ落ちていました。
その部屋にも 本棚があったのですが、その本棚も バッタリ倒れていました。
もし、その部屋に いつものように寝ていたら、わたしの体は、下半身は、タンスの下敷き、頭は、本棚の下敷きに なっているところでした。
どう想像しても、とても無事ではすまされない状況でした。

